路線図はユニバーサルデザインの先駆け
ユニバーサルデザインという言葉を知っていますか? ユニバーサルデザインは、国籍や年齢などの違い、障害の有無などを問わずに利用できることを目指した建築や製品など、様々な設計に反映されています。日本ではしばしばバリアフリーと混用されがちですが、障害の有無に関わらず、あらゆる人々にわかりやすく、使いやすいデザインのことを指します。そういう意味では、複雑に入り組んだ日本の鉄道網を誰にでもわかりやすく示した路線図はユニバーサルデザインの先駆けと呼んでも過言ではありません。
世界には、路線図が存在しなかったり、あったとしても、アップデートが全く為されないという都市も多く存在します。鉄道はともあれ、バスなどは地元の人ですら沿線上の住民でないとわからないということもしばしば見受けられます。
しかし、グローバル化が進む中で、本国へ戻った留学生たちが、先進国で目にした路線図のデザインに感銘を受け、発展途上国を中心として路線図を整備し、誰もが公共交通機関を簡単に利用できるようにするという運動が活発になっています。ユニバーサルデザインが、交通渋滞や大気汚染などの地球環境問題すらも解決する一つの事例として注目を集めています。
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日々進化する日本の鉄道路線図
日本では当たり前のように存在する路線図、しかも線区によりカラフルに色分けされており、眺めているだけでも楽しいと感じる人も多いのではないでしょうか。
特に都市部の地下鉄や、首都圏のJR線では路線図の色と、その路線を実際に走っている車両のカラーがリンクしていることも多く、直感的に路線図を理解できます。また、駅構内の案内看板と色とは基本的に揃えてありますので、乗り換えなども簡単に出来るようになっています。
昔は白黒だった?日本の鉄道路線図
今でも時刻表などに掲載されている広域の路線図では、基本的に黒か、青の線で描かれており、これは昔からさほど変わっていません。大きく変わっているのは、旅客案内用に駅や車内に張り出されている都市部の路線図です。当然、このような路線図は都市部の通勤路線の発達とともに登場することになるわけですが、当初は今のようなカラフルな色分けは行われていませんでした。それもそのはずで、かつての日本の電車は国鉄(今のJR)を中心として、茶色の電車がほとんどだったからです。
カラーの電車が登場するのは1950年代後半以降のことです。当然、路線ごとの色分けが首都圏を中心に進んだのもそれ以降のことで、今のようにはっきり決まったのは、平成の時代に入ってからと意外に新しいのです。1960~1970年代の国電路線図を見てみると、路線の色分けは行われていますが、今の色分けとは異なっている部分もあります。
当然、駅構内の案内板も白黒で、カラー別の案内が始まったのは、本当にここ20~30年のことなのです。一方、地下鉄はこの限りでなく、開業時からオレンジや赤のカラフルな電車が走っており、東京の地下鉄を中心として、そのカラーが路線図にも反映され、大部分は今にも引き継がれています。
路線別カラーもユニバーサルデザインを取り入れ進化
このように近年では当たり前となったカラー路線図ですが、それでも日々より良いものに変化しています。よくわかるのが、東京メトロの路線図です。2004年の民営化前の営団地下鉄時代の路線図と比べてみましょう。
まず、第一印象として、角ばったデザインが、丸みを帯びたデザインになり、より見やすくなっています。また、かつては、実際の地図を無視して、例えば東西線が真横に一直線で書かれていたりしたものが、実際地図に即した位置関係で描かれ、また一部は地上の海や川などの自然環境も加えられるようになりました。それだけでは、ありません。路線の色合いがよく見てみると、色の濃淡の強弱がはっきりして描かれるようになり、路線が交差する個所は白抜きがされています。また、路線別に色分けされているにも関わらず、路線図内でも路線名を記しています。
これらは一般読者にも、さりげなく見やすくなっているポイントではありますが、本来の目的は式弱者の人に、路線の区別をはっきり見えるように改良したユニバーサルデザインの一環でもあります。私鉄路線の停車駅案内でも、特急や急行などの線の脇に、あえて、「あか」や「あお」といったひらがなを振っているのも、これと同じです。
多くの人には明らかに違う色と見えていても、同じように見えてしまう人もいるのです。さらに、凡例部分に路線の頭文字のアルファベットを加えています。これは後ほど、駅ナンバリングでも紹介しますが、路線を記号化することで、これもまた色の識別が困難な人に対してのユニバーサルデザインでもあります。
近年広まる駅ナンバリング
最近、駅の案内や路線図で、駅名の後ろにアルファベットと番号を組み合わせて表示しているのを見たことがあるのではないかと思います。駅ナンバリングと言って、これもまたユニバーサルデザインの一つです。
日本人にとっては、かえって案内や路線図が見にくくなったと思う人も多いでしょう。正直、こんな番号などなくとも、利用に不便はありません。漢字がわからなくとも、ひらがながふってあったり、最悪、アルファベット表記があるので、読むことは可能です。では、わざわざ何の為に番号を振っているのでしょうか。日本で駅ナンバリングが開始されたのは、ここ十数年の間ですが、日本が国を挙げて観光立国を推し進めてきた期間でもあります。
今や、年間訪日観光客は3000万人をこえていますが、日本を訪れる外国人の方々に、より簡単に鉄道を利用してもらうために設定されたのが、駅ナンバリングなのです。
駅ナンバリングは本当に便利か?
日本に住んでいる間は全く恩恵がない、駅ナンバリングですが、いざ自分が海外に出ると、この駅ナンバリングの有難さを実感することが出来ます。特に、発音や文字が難しい国々などでは非常に助かることがあります。私はしばしばタイのバンコクに出張に出かけ、もちろん路線図は頭に入っており、都市鉄道網を乗りこなしているのですが、同行の人に今からどこへ行き、どこで乗り換えるのかというのを説明するとき、どうしてもタイの難しい発音がふと出てきません。
そんなときは、今から何番に行って、そこで何番に乗り換えるという使い方が出来ますので、駅ナンバリングは便利です。
ですから、日本語に不慣れな外国人にとって、この駅ナンバリングが移動の際の手助けになっていることは事実でしょう。
駅ナンバリングの付け方
駅ナンバリングについて、日本全国で統一の付番方法はなく、各鉄道事業者が独自に決めていますが、基本的に路線の頭文字等から取ったアルファベット+数字という組み合わせになっています。先ほど、路線カラーで紹介した東京メトロを例にとってみると、銀座線は渋谷駅のG01から、浅草駅のG19まで順に振られています。
しかし、渋谷駅には銀座線の他に、半蔵門線、副都心線も乗り入れており、同時にZ01、F16という番号も与えられています。
ただ、それだけではありません。渋谷駅には東京メトロの他、JR、東急、京王と言った路線も乗り入れており、それぞれが異なる番号を持っています。
これはかえって、混乱を招く可能性も指摘されていますが、全国統一のナンバリングを振ると、かえって数が大きくなりすぎるなど、難しい問題を抱えています。また、全国に目を向けると、当然重複番号が存在していますが、同一年県内ではなるべく、アルファベットと番号の組み合わせが被らないように、自主的に調整が行われています。東京メトロ丸の内線はナンバリング上、Mを名乗っていますが、後からナンバリングが設定された都営地下鉄三田線はIにするなどの考慮が見られます。
首都圏JR駅に見られる駅名レターコード
JR東日本の首都圏エリアでは2020年の東京オリンピック開催に備え、2016年から駅ナンバリングの導入が始まっています。基本的な付番方法は先ほど紹介したものと同じで、例えば山手線では東京駅から順にJY01~JY30までが振られています。
しかし、それとは別にJR東日本では同時に駅名レターコードを一部の駅(乗換駅や主要駅)に与えています。レターコードとは、アルファベット表記を3文字程度に省略したもので、空港レターコードは古くから有名です。鉄道でも、アルファベット使用圏の国々の鉄道では、業務上の略語として、また旅客案内用の掲示としても使われています。日本ではあまり認知されていませんが、先進的な取り組みといえ、番号よりもより、本来の駅名を連想することが出来るので、日本人にとっても親しめるものと言えそうです。
例えば、渋谷はShibuyaを短縮してSBY、新宿ならSJKという感じです。なお、東京はTYOで都市コードとして広く親しまれているコードを採用しています。グローバルな感じがしてなんとなく格好良いなと思うには私だけでしょうか?
まとめ
このように一見何気なく触れている路線図ですが、刻々と変化しています。一昔前の路線図が部屋の片隅からふと出てきたとき、最新のものと見比べてみると面白いでしょう。もちろん、デザイン的になつかしいという印象を持つと思いますが、単純にシンプルだと思います。今の路線図は色々な情報を盛り込みすぎて、逆に見づらくなっているという面も否めません、今後、よりわかりやすい路線図としてどのように改良されているのか、注目したいですね。