中学受験 歴史シリーズ。第13回目は『日本の歴史 – 近世(江戸時代4)』です。
前回の講義『日本の歴史 – 近世(江戸時代3)』では、ヨーロッパ諸国での市民革命、産業革命とヨーロッパのアジア侵略、日本への外国船の接近などについて見てきました。
前回学習した通り、日本が鎖国している間に欧米の国々は近代化を遂げ、力を強めてきました。そして、鎌倉時代の元寇を除いて、周囲の海によって守られてきた日本にも、外国船が接近するようになりました。日本の船がまだ風だけを頼りにした帆船の時代に、ついに蒸気機関を動力源とし、大砲を積んだ船がやってきました。この難局を江戸幕府は切り抜けることが出来るのでしょうか?いや、切り抜けることは出来ませんでした。しかし、外国の接近によってもたらされた大きな衝撃によって、日本は近代化への道をようやく開くことが出来ました。そして、当時の日本人の先見の明によって、欧米各国にも肩を並べる強国へと進んでいくことになります。今回は、日本の開国のきっかけとなるペリー来航から江戸幕府の滅亡までも学習します。
それでは確認していきましょう。
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前回までの学習内容【おさらい】
本題に入る前に、前回までに学習したことをおさらいしましょう。歴史の学習は連続性が重要です。歴史の分野では毎回、復習問題をまず解いてから始めましょう。
問題1 16世紀~18世紀のヨーロッパで、強力な権力を持った国王が思いのままに国を支配していた専制政治を【 】と呼ぶ。
問題2 17世紀の中ごろ、国王の圧政に反抗してイギリスで始まった革命は【 】である。
問題3 名誉革命の翌年に出された王権の制限、議会の権限、国民の権利を定めた宣言を【 】と呼ぶ。
問題4 アメリカ独立戦争の後、初代アメリカ大統領となったのは【 】である。
問題5 1789年、パリ市民がバスチーユ監獄を襲って始まった革命は【 】である。
問題6 イギリス人哲学者で、17世紀に社会契約説と抵抗権を提唱のは【 】である。
問題7 フランス人哲学者で18世紀に社会契約説と人民主権を提唱のは【 】である。
問題8 フランス人哲学者で三権分立を提唱のは【 】である。
問題9 イギリスの産業革命は【 】から始まった。
問題10 イギリスは産業革命当時、【 】と呼ばれた。
問題11 1857年に発生した【 】大反乱をイギリスは武力でおさえ、植民地化した。
問題12 【 】戦争に勝利したイギリスは清と南京条約を結び、香港を割譲させた。
問題13 イギリスが清に支払った銀を回収するために、植民地であるインドを介して行った貿易を【 】と呼ぶ。
問題14 1792年、ロシアの使節として【 】が根室に来航した。
問題15 【 】は千島と樺太を探検し、樺太は島であることを発見した。
問題16 1825年、幕府は【 】を出し、外国船の撃退を命じた。
問題17 問16の法令のきっかけとなったのは、1808年にイギリス船が長崎港に侵入した【 】である。
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ペリー来航と開国
皆さんは「黒船来航」という言葉を聞いたことはありますか。、海外からの新製品、はたまたタレントなどが日本にやってきてブレイクしそうなときによく使われる言葉です。つまり、国内に大きな影響を与えそうな外国産品を比ゆ的に表現しています。しかし、この黒船来航のもとの意味は、この江戸時代末期にアメリカからやってきて、日本に開国を迫った黒い船(蒸気船)がやって来たことを指しています。また、このときの艦隊を率い、開国を迫った司令官ペリーに因み、ペリー来航とも呼ばれます。これまで、ロシア船やイギリス船を追い払ってきた江戸幕府ですが、どのような対応をとるのでしょうか。
開国までの流れ
ペリー艦隊は4隻の軍艦を率いて乗り浦賀(神奈川県)に来航(1853年)
【理由】太平洋上で漁を行う捕鯨船(当時、欧米ではランプ用の灯油として鯨油が必要不可欠だった)に薪や水の補給地点が必要だった。また、アメリカ西海岸から中国への最短航路上に日本列島があり、貿易船の太平洋横断上でも補給地点が必要だった。
【状況】ペリーはフィルモア大統領の国書を持参し、幕府に開国を迫る。日本人の知らない蒸気船を用いること、また砲撃などによって威圧感を与えて、高圧的な態度で交渉に臨んだ。しかし、当時の将軍が病気で床に伏していたことを理由に、その場での回答が出来ず、1年後の返答を約束してペリーを引き返させた。日本の人々は、煙突から煙を吐き出す初めて見る黒塗りの外輪船に驚き、その様子から黒船と呼んだ。黒船の砲撃(空砲)に人々は一時的に混乱するが、見物人が殺到しお祭り騒ぎの様相であったという。
日本の歴史に関しての問題を解いてみましょう。
問題 下に紹介するのは当時の様子を詠んだ狂歌です。当時の状況をどのように詠んでいるのでしょうか?
「泰平の眠りを覚ます上喜撰、たった4杯で夜も眠れず。」 ※上喜撰:高級なお茶
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【対策】江戸幕府はアメリカと戦争になったときに備え、江戸湾の警備の為に、砲撃用の台場を建設。(現在のお台場の由来)
軍艦6隻を率いてペリー再来航(1854年)
再び浦賀沖に現れたペリー艦隊は、横浜(当時、人口350人の村)から日本に上陸した。艦隊が江戸湾に集結し、江戸は大きな混乱に陥ったが、見物人も多数詰めかけ、観光地のようになっていた。また勝手に舟を出してアメリカ人と接触する人もいた。
【結果】日米和親条約締結(1854年)
【内容】函館・下田の二港を開港。ただし、食料・水・燃料(石炭・薪)の供給のみで貿易(通商)は行わない。
※その後、イギリス・フランス・オランダ・ロシアとも同様の条約を結んだ。
鎖国体制の終了。
下田に駐在したアメリカ総領事ハリスが幕府に対し、通商を要求(1856年)
幕府側は当初は拒否していたが、強い要求に合意せざるを得なくなった。ただ、最終的には天皇の許可(勅許)が必要で、天皇は通商条約の締結には反対の姿勢で、これを拒否した。しかし、幕府内の意見もまとまらない中、ハリスの高圧的態度、また戦争勃発の危険性から、天皇の許可を待たずして、条約が締結されることになった。当時の大老は井伊直弼で、条約締結の責任者。締結後、条約批准書の交換のために咸臨丸(初めて太平洋を横断した幕府の軍艦)で勝海舟、福沢諭吉らがアメリカに渡る。
【結果】日米修好通商条約締結。 1858年
【内容】函館・横浜・長崎・新潟・兵庫を開港。下田は閉鎖。関税自主権(※1)がない、領事裁判権(※2)を認める(治外法権)という日本に不利な条約。
※1 関税自主権:輸入関税を自国で決める権利。この場合、日本が関税を決める権利が無く、アメリカが自国製品に有利に関税を決めることが出来た。
※2 領事裁判権:日本国内で外国人が犯罪などを起こしたとき、日本ではなく外国の領事が外国の法律で裁くことが出来る権利。外国人の犯罪に対して甘い審判を下せる。
【影響】金銀交換率が日本とアメリカで異なっていた為、金が国外に流出した(日本が金①:銀⑤に対し、アメリカは金①:銀⑮という比率、日本で金に交換しアメリカで再び銀に替えると価値が上がる)。安価な絹織物・毛織物が輸入され、国内生産地が大打撃を受ける。生糸が大量に輸出され、日本国内では品不足になった。物資不足、物価上昇など社会は混乱した。最大貿易港は横浜、横浜村は港町として大発展を遂げる。
※その後、同様の条約を、イギリス・ロシア・オランダ・フランスとも締結
- 開国後の最大貿易相手国はアメリカではなくイギリス!アメリカが南北戦争に突入し、国内が混乱した為
開国後の動き
日本国内は開国賛成派と開国反対派に二分され、政治は混乱する。特に天皇の許可を得ずに日米修好通商条約を結んだことに対する、幕府への圧力が高まってくる。但し、鎖国はあくまでも幕府手動で行ったもので、朝廷の意向を反映したものではないので、開国したことに対しても幕府の判断で問題ないというのが幕府の言い分だった。
安政の大獄(1858年~1859年)
井伊直弼が開国反対派(攘夷派)を大量に処罰。吉田松陰ら約100名。
※吉田松陰:長州藩(今の山口県)の武士、思想家。松下村塾を開き、明治時代に活躍する伊藤博文・山縣有朋・高杉晋作などがここで学んだ。
桜田門外の変(1860年)
攘夷派により井伊直弼が暗殺される。
江戸幕府の滅亡
開国により幕府への風当たりは強くなったものの、当初は倒幕(幕府を倒す)運動には至らず、尊王攘夷運動と呼ばれました。つまり、天皇を尊び、外国を排除しようという動きです。しかし、江戸幕府も天皇を尊んでいることは同じです。鎌倉時代以降の武家政権では、天皇から政治の権利を委任(大政委任)されて、政治を行ってきたに過ぎません。ですから、日本に近づく外国を退けようという運動に過ぎず、敵は外国であり、矛先はまだ幕府には向いていなかったのです。そこで、幕府は朝廷との関係を強める(公武合体)ことで尊王攘夷運動を抑えようとしますが、不穏な動きは絶えず、京都の治安維持の為に幕府によって新選組が作られたのもこの頃の話です。
尊皇攘夷から倒幕へ
開国後も引き続き、外国を追い払おうという風潮の中、いくつかの事件をきっかけに、攘夷から倒幕へと、風向きが変わり始める。そして、倒幕運動の中心になるのは、外様大名の多い九州や西日本の諸藩であった。
生麦事件(1862年)
神奈川県生麦にて、薩摩藩の隊列(大名行列)にイギリス人が横切り、殺害される(斬り捨て御免)。
【結果】薩英戦争(1863年)。圧倒的な戦力差の中、荒天により薩摩藩の敗北はなんとか免れた。その後、和平を結び、イギリスから武器の調達が可能になった。
四国艦隊下関砲撃事件(1864年)
長州藩が関門海峡を通過する船に無差別に砲撃。幕府からも批判が出て、一時的に長州藩は窮地に陥る。
【結果】下関砲台をイギリス・アメリカ・オランダ・フランスの四か国に占領される。薩長、欧米諸国の強さを認識し、攘夷は不可能と認識する。また、日本の近代化の遅れを知ることになり、江戸幕府を滅ぼして、強力な国づくりを目指すことで一致する。
薩長同盟(1866年)
土佐藩の坂本龍馬の仲立ちにより、長州藩と薩摩藩で同盟が結ばれる。
- 長州藩の実力者:木戸孝允・高杉晋作
- 薩摩藩の実力者:西郷隆盛・大久保利通
大政奉還と戊辰戦争
薩長同盟により倒幕派の動きを知った江戸幕府は、全面的な戦争を避ける為に自ら政権を朝廷に返上。これを大政奉還と呼ぶ。これにより、事実上、江戸幕府は終わりのときを迎えたが、あくまでも江戸幕府を滅ぼすことを目標としていた薩長側は、これを良ししない。徳川家から力づくで権力を奪い、江戸幕府無き後の新政府で、薩長の立場を守る為にも戦いを継続しました。
大政奉還(1867年10月14日)
第15代将軍、徳川慶喜慶喜、大政を天皇に返上。大政委任論の放棄。戦争を経ずに、早期に権利を朝廷に返上することで、新政府内での議会で議長を徳川家にしようと画策。しかし、薩長も同じことを考えていた。
王政復古の大号令(1867年12月9日)
薩長を中心とした倒幕派によるクーデター、倒幕派による政権奪還。朝廷内の岩倉具視を密通し、倒幕の密勅を受けていた。天皇は朝廷が政治を行うことを宣言し、徳川家の勢力を取り除こうとした。新政府の中心は三条実美と岩倉具視らの公家と、薩摩・長州・土佐・肥前の武士で徳川家に対しては領地の返還を求めるなど、強い態度で臨んだ。
【内容】幕府の廃止・摂政関白の廃止。
【結果】それまで、江戸幕府に逆らう「賊軍」であった薩摩藩や長州藩の立場が、王政復古の大号令によって逆転し、江戸幕府側(徳川家側)が朝廷に逆らう「賊軍」となった。徳川慶喜は朝敵となり、徳川軍は戦意を喪失し、西洋式の武器を備える薩長側(新政府軍)の圧倒的優勢の状況で、戊辰戦争に突入する。
戊辰戦争(1868年)
日本史上最大にして最後の内戦。新政府軍VS旧幕府軍による戦い。つまり、
官軍:新政府軍 VS 賊軍:旧幕府軍(水戸藩・会津藩・奥羽列藩同盟・新撰組など)
という構図。
【流れ】
- 鳥羽伏見の戦い:慶喜、京都を捨て江戸へ敗走(1868年1月)
- 江戸城無血開城:西郷隆盛と勝海舟の会談(1868年4月)
- 会津戦争:江戸城開城後も新政府軍は旧幕府側の東北の諸藩を滅ぼすべく、北へ進軍。白虎隊(会津藩士の子どもたちによって組織された軍隊)が犠牲になる。
- 五稜郭の戦い(函館戦争):旧幕府軍降伏。土方歳三戦死、榎本武揚ら降伏(1869年5月)
※五稜郭:函館開港による防衛力強化のために作られた西洋式の築城。
日本の歴史に関しての問題を解いてみましょう。
問題 「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉がありますが、この言葉は江戸時代末期の出来事を由来としています。この出来事を明らかにした上で、この言葉の意味を考えてみましょう。
▼ 解答をみる
歴史の学習
中学受験の多くを占める歴史は、年表や人物名など暗記部分が大量になります。年代ごとにまとめたり、人物にフォーカスして時代背景を学んだり、文化財や地理的要素から歴史を探るという方法もあります。膨大な知識が必要となる歴史ですが、興味のある角度から切り取っていくと案外スッと覚えることができます。
No. | テーマ | 内容 |
1 | 旧石器時代・縄文時代 |
旧石器時代、縄文時代の暮らしや文化を解説。 |
2 | 弥生時代 |
古代、弥生時代の暮らしや文化を解説。 |
3 | 古墳時代・飛鳥時代1 |
古代、古墳時代、飛鳥時代、氏姓制度、古墳時代の終焉から 聖徳太子の時代、飛鳥時代の始まりを解説。 |
4 | 飛鳥時代2・奈良時代1 |
古代、飛鳥時代、奈良時代、大化の改新、平城京、 聖武天皇と仏法などを解説。 |
5 | 奈良時代2・平安時代1・平安時代2 |
古代、奈良時代、平安時代、藤原氏の摂関政治、 浄土真宗、武士の台頭、源氏の進出を解説。 |
6 | 平安時代3・鎌倉時代 |
中世、平安時代、鎌倉時代、平氏、封建制度、 執権政治、承久の乱暮を解説。 |
7 | 室町時代 |
中世、室町時代、南北朝の動乱、 東アジアの情勢、経済、産業を解説。 |
8 | 戦国時代 |
中世、戦国時代、都市の発展、ヨーロッパの 状況や文化を解説。 |
9 | 安土桃山時代 |
中世、安土桃山時代、織田信長、豊臣秀吉、 徳川家康の天下統一を解説。 |
10 | 江戸時代1 |
近世、江戸幕府の成立、外交、鎖国、 徳川綱吉の時代を解説。 |
11 | 江戸時代2 |
近世、江戸時代、産業の発展と文化、 三大改革を解説。 |
12 | 江戸時代3 |
近世、江戸時代、ヨーロッパ諸国の市民革命、 産業革命を解説。 |
13 | 江戸時代4 |
近世、江戸時代、ペリー来航、大政奉還、 江戸幕府滅亡を解説。 |
14 | 明治時代1 |
近世、明治時代、明治維新、富国強兵、 文明開花を解説。 |
15 | 明治時代2 |
近世、明治時代、西南戦争、大日本帝国憲法の制定、 立憲国家を解説。 |
16 | 明治時代3 |
近世、明治時代、日清・日露戦争、産業革命、 日本の領土を解説。 |
17 | 大正時代 |
近代、大正時代、第一次世界大戦、 大正デモクラシーを解説。 |
18 | 昭和時代1 |
近代、昭和時代、、関東大震災、満州事変、 日中戦争、世界恐慌を解説。 |
19 | 昭和時代2 |
近代、昭和時代、領土、民主化政策、 第二次世界大戦を解説。 |
20 | 昭和時代3 |
近代、昭和時代、高度経済成長、第一次石油危機、 戦後の国際関係を解説。 |
21 | 平成1 |
現代、平成、バブル崩壊、冷戦、 文化、経済を解説。 |
22 | 平成2・令和 | 現代、平成、令和の経済、政権交代、東日本大震災など 日本を取り巻く環境を解説。 |
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