中学受験 地理シリーズ。第29回目は『関東地方の自然・産業・世界遺産・交通』です。
前回の講義『東北地方の自然・歴史・産業』では、東北地方の自然環境、歴史や世界遺産などを見てきました。日本地理の総まとめ、3回目は関東地方です。
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関東地方の自然環境
関東地方の地形と気候について見てみましょう。関東地方の自然環境は、利根川が運んだ土砂によってつくられた低地t火山灰が積もってできた関東ロームnおおわれた台地が特徴的です。その自然を活かした産業や農業と共に、平野や河川の名称をしっかりと押さえておきましょう。
関東地方の地形
流域面積が日本最大の利根川の流域に日本最大の関東平野が広がっています。山地・山脈では西部に関東山地が、北部に越後山脈が連なり、中部地方との境になっています。さて、坂東太郎とも異名を持つ、三大暴れ川の一つでもある利根川の流れは現在、越後山脈の南麓、群馬県みなかみ町を水源とし、関東地方を横切る形で、河口の千葉県の銚子までへと注いでいます。地図帳で上流から下流までの川の位置を確認してください。しかし、かつての利根川は銚子ではなく、東京湾に注いでいたのです。地図帳を見ると、利根川から江戸川が分岐しているのがわかると思いますが、この江戸川がかつての利根川なのです。一体、どういうことでしょうか?
利根川の東遷事業
現在では、暴れ川というイメージの少ない利根川ですが、かつては度々氾濫し、江戸の町に水害をもたらしていました。特に現在の山手線の東側、いわゆる下町と呼ばれるエリアは土地が低く、荒川、利根川(江戸川)と大きな川が多く、水害の多い地区でした。そこで、江戸時代に徳川家康の命令によって、利根川と鬼怒川の間を水路でつなぎ、利根川は渡良瀬川と合流したのち、東にそのまま進み、銚子に向かうようになったのです。
現在、江戸川と呼ばれている部分はかつての渡良瀬川の下流部分です。銚子から江戸が川でショートカットされたことにより、交通路としても大いに賑わいました。
利根川東遷の恩恵
そして、この利根川の東遷事業によって、いわゆる利根川水系と呼ばれる利根川の流域面積は拡大し、現代においては群馬県・埼玉県・栃木県・茨城県・千葉県・東京都を潤す、まさに関東地方の水がめとも言える存在となっています。
関東地方の地形についてよく出題される問題を少し解いてみましょう。
問題1 関東地方で、利根川水系の水を使っていない県が一つだけあります。それはどこですか?
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【2015年】鬼怒川水害
利根川水系の各河川の上流には治水のため多くのダムが建設され、関東地方において水不足、そして洪水は滅多に発生しなくなりました。しかし、近年の地球温暖化に伴う異常気象では、これまでにない量の雨が短期間に降ることもあり、全国的に川の氾濫による水害が増えています。そんな中、茨城県常総市を中心とした一帯で、2015年に鬼怒川の堤防が決壊し、大規模な水害が発生しました。その箇所はちょうど利根川と鬼怒川が合流する付近です。
堤防の一部がソーラー発電用に切り取られていた等、諸説ありますが、歴史的に見れば起こるべくして起きた災害であり、この結果、東京は大洪水から守られたわけです。川の近く、ことさら低い土地は氾濫を見越して、水田が広がっていた地区であり、むやみに住宅地を広げてはいけないということを物語っています。
関東地方の気候
季節風の影響で、夏は降水量が多くなり、冬は晴れの日が多いですが乾燥します。関東地方北部では、日本海側で雨や雪を降らし、山を越えてきた乾燥した強い風が吹き、これはからっ風や、「赤城おろし」と呼ばれています。
関連問題プリント 関東地方の地形・農林水産業
関東地方の産業
関東地方の主な産業を見てみましょう。関東地方は、情報通信技術関連産業が盛んです。IT、ICTなどの第3次産業の従事者が多いのが特徴で、70%以上がサービス業に従事しています。
関東地方の農業
関東地方の農業は、近郊農業と抑制栽培、輸送園芸農業が主流となっています。それぞれの特徴と生産されているものをリンクさせて覚えておきましょう。
畑作
関東平野の特に西側は浅間山や富士山の火山灰が降り積もった関東ロームと呼ばれる赤土が広がっており、水持ちが悪い為、畑作が中心です。このエリアでは大都市に近いことを活かした近郊農業を行っており、鮮度が重要なねぎやきゅうり、小松菜などの野菜を栽培しています。この他、群馬県の嬬恋村では標高が高く、気温が低いことを活かして、キャベツを栽培(高冷地農業)し、他の生産地よりも出荷時期を遅らせる(冬野菜を夏に出荷する)抑制栽培を行っています。
稲作
千葉県、茨城県にまたがる利根川下流域および霞ヶ浦(日本で第2位の面積を誇る湖)周辺では、水を得やすいため、稲作が盛んです。土地が低く、川や水路が多く張り巡らされているこの一帯は水郷と呼ばれており、関東地方の一大穀倉地帯です。台風被害を防ぐため、通常より早めに収穫できる早場米を出荷しています。
関連問題プリント 関東地方の地形・農林水産業
関東地方の工業
関東地方では人件費の上昇や用地不足により、地方や海外に移転する工場が増えています。特に国内産業が衰え海外移転が進むことを産業の空洞化と呼びます。
京浜工業地帯
東京都から神奈川県の沿岸部にかけて広がる工業地帯。機械工業を中心とする重化学工業が盛んです。川崎市には石油化学コンビナートが立地し、石油精製工場を中心に、石油化学、鉄鋼、機械、金属とあらゆる工場が集積しており、その光景は壮観です。また、情報の発信、集積地である東京では印刷・出版業(印刷業)も盛んです。しかし、出荷額は近年大きく減少しており、同じく関東地方に立地する関東内陸工業地域よりも少なくなっています。工業地帯、工業地域合わせた出荷額ランキングでは第5位。
関東内陸工業地域
内陸県である埼玉県、群馬県、栃木県にまたがる工業地域。工業団地を中心に自動車や電気機器の組み立て工場が多く、また食品産業も盛んです。一方で、内陸に立地することから、巨大なプラントを必要とする石油化学の割合は少ないです。出荷額ランキングでは阪神工業地帯に次ぐ第3位。
京葉工業地域
東京都から千葉県沿岸の埋め立て地に広がる工業地域。鉄鋼、石油化学などの大規模な工場が集まっており、市原市の石油化学コンビナート、千葉市、君津市には製鉄所が集まっています。鉄鋼、石油化学、特に石油化学の出荷割合が多いのが特徴です。
鹿島臨海工業地域
茨城県南東部の鹿島浦に面した鹿嶋市(市の名称では嶋を使います)、神栖市を中心に発展した工業地域です。かつては砂丘だったところに人口の掘り込み湾を造成し、製鉄所、石油化学コンビナートなどが広がっています。
関連問題プリント 関東地方の工業
世界遺産など
関東地方の世界遺産などを見てみましょう。関東地方には4つの世界遺産があります。2014年に登録された富岡製糸場と絹産業遺産群には、有名な富岡製糸場以外にも、田島弥平旧宅、高山社跡、荒船風穴も含まれています。
日光(栃木県)
1999年、世界文化遺産に登録されました。登録名は「日光の社寺」。日光東照宮・日光二荒山神社・日光山輪王寺などの建築物とその文化的景観が対象。この中でも日光東照宮は江戸幕府の初代将軍、徳川家康を「東照大権現」という「神」として祀っている神社です。
富岡製糸場(群馬県)
2014年に世界文化遺産に登録されました。登録名は「富岡製糸場と絹産業遺産群」。富岡製糸場は明治時代にフランスの技術を導入し、官営模範工場として建設された、日本で最初の器械製製糸工場です。この地域では製糸に欠かせない蚕の飼育(養蚕)がさかんで、周辺の養蚕関連の施設と一体で世界遺産に登録されています。
鎌倉(神奈川県)
「武家の古都・鎌倉」として推薦され、世界遺産暫定リストに掲載されていましたが、2013年に不登録が決定しました。鎌倉は日本で初めての武家政権(源氏)の中心地で、四方を海と山に囲まれ、防衛上非常に有利な土地に築かれた特徴のある都市です。
都市と交通(他地域との結びつき)
関東地方の交通事情や問題点を見てみましょう。首都である東京を要する関東地方には、人口の3分の1が集中しています。東京23区をはじめ、6つの政令指定都市もあり、東京を中心に放射線状に交通網も発達しています。日本各地を結ぶだけでなく、世界各地と繋がっています。
首都 東京
霞が関・丸の内を中心とする都心に政治、経済の機能が集積しています。これらは皇居を挟んで山手線内の東側です。逆に西側には私鉄のターミナル駅である池袋・新宿・渋谷が並び、戦後にターミナルデパートを中心に商業地区として大きく発展しました。今では若者文化の集積地になっています。都庁の新宿移転をきっかけとして、都心に匹敵する機能も持ち合わせ、この西側エリアは副都心とも呼ばれています。
過密化
都心から半径およそ50㎞の東京大都市圏(首都圏)には日本の人口の4分の1が集まっています。人口密度が極端に高くなっています。住宅不足、土地価格の高騰などから、人々は都心から離れたベッドタウンに居住し、鉄道や車で通勤しています(職住分離)。しかし、一方で、交通渋滞や鉄道の通勤ラッシュを引き起こしています。
高度経済成長期に、多摩、港北、千葉といったエリアに丘陵地帯を切り開き、ニュータウンが造成されました。また、鉄道で都心と結ばれているベットタウンを抱える都市を衛星都市と呼びます。相模原市、さいたま市、千葉市などはその代表例です。
関東地方の政令指定都市
人口50万人以上の都市を政令指定都市と指定しますが、関東地方だけで東京23区をはじめ、6つの政令指定都市があります。
- 神奈川県:横浜市・川崎市・相模原市
- 千葉県:千葉市
- 埼玉県:さいたま市
ドーナツ化現象と都心回帰
このように、より良い住環境を求めて人々は東京の郊外に住むようになり、東京都心の人口が減少しました。これをドーナツ化現象と呼びます。ベッドタウンでは昼間の人口が100%を切るのに対し、東京都心では夜間人口が100%を下回ります。これを改善するために、工業が衰退した湾岸部に高層マンションを建設するなどして、現在は人口減少に歯止めがかかっています。都心の人口が戻りつつある現象を「都心回帰」と呼びます。
国内交通
鉄道では山手線を中心として各方面に放射状に路線が伸びています。その中で、東京駅は各地方へ延びる新幹線網の起点です。また、東京国際空港(羽田空港)は国内航空網の中心です。
国際交通
羽田の東京国際空港、成田の新東京国際空港の2つの空港が日本と世界をつなぐ玄関口となっています。
成田国際空港(千葉県成田市)
1978年に開港した日本の空の玄関口。貿易額で日本最大の港。精密機械、半導体(集積回路)、医薬品など、小型で軽く、値段の高い品目を扱っています。
横浜港
江戸時代末期に開港した国際的な貿易港。貿易額は成田、名古屋、東京に次ぎ、第4位。主な輸出品目は自動車、自動車部品など。
まとめ
知っているようで知らない関東地方です。身の回りの工場や、農地、そして山や川など、改めて意識してみてください。気になるものがあったら、自分でどんどん調べてみましょう。自分の住んでいる地域のことを知ることは地理学習の第一歩です。是非、実践してみてください。首都圏の私立校の入試問題では、受験者にとって身近な地理に関する問題を深く出題されるということも多々あります。身の回りにあるものは全て教科書であるということを忘れてはいけません。
この章の関連問題
下記にてこの章の関連問題もご用意しました。
何度も解いて知識を体に染み込ませましょう。
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第29章の問題まとめ
Yotube動画で第29章『関東地方の自然・産業・世界遺産・交通』の問題を解いてみましょう!全50問です。