中学受験 地理シリーズ。第28回目は『北東北地方の自然・歴史・産業』です。
前回の講義『北海道の自然・歴史・産業』では、北海道の自然環境、歴史や世界遺産などを見てきました。日本地理の総まとめ、2回目は東北地方です。東北地方の県名と県庁所在地、全て言えますか? そして、それぞれの県の位置がわかりますか?
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東北地方の自然環境
東北地方の地形と気候について見てみましょう。東北地方には1993年に世界自然遺産に登録された白神山地をはじめとした、日本最長の山脈など多くの山脈が連なっています。平野や特徴的な海岸、東北地方特有の冷たい風など押さえておくべきキーワードが多いので、しっかりと地図と照らし合わせて覚えておきましょう。
東北地方の地形
奥羽山脈を中心に西側に出羽山地、東側に北上高地が南北に走ります。そして、その中間にいくつかの盆地が存在します。山形盆地、北上盆地はしっかり覚えましょう。そして、川の下流部には平野があります。最上川下流の庄内平野、雄物川下流の秋田平野、北上川下流の仙台平野です。最上川は日本三急流の一つです。三陸海岸の南部は山が海に沈んで出来たリアス式海岸です。2011年の東日本大震災では、津波の被害を大きく受けました。
日本海側は北西の冬の季節風の影響で冬の降水量が多いです。太平洋側は寒流の千島海流(親潮)の影響で、夏の気温が日本海側より低くなっています。また、太平洋側には夏に北東からやませという風が吹き、夏に低温、霧の発生から日照不足になることがあります。この影響で農作物が育たなくなることを冷害と呼びます。
関連問題プリント 東北地方の地形・農林水産業
東北地方の産業
東北地方の主な産業を見てみましょう。東北地方は北上山などの山間部では、畜産業が盛んです。乳牛や肉牛、羊の他、若どり(ブロイラー)などが飼育されています。生産地と特徴を合わせて押さえておきましょう。
東北地方の農業
日本の穀倉地帯として知られる東北地方は、稲作が盛んです。しっかりと平野名と位置を覚えておきましょう。さらに果物の生産も全国上位を占めるものが多数あります。生産地と果物を合わせて押さえておきましょう。
稲作
東北地方は北陸地方と並ぶ穀倉地帯で、米の生産量は全国およその4分の1を占めます。地方別の米の生産量は日本一です。庄内平野、秋田平野、仙台平野が主な米どころで、それぞれはえぬき、あきたこまち、ひとめぼれという品種が主に栽培されています。秋田県の八郎潟はかつては日本で二番目に大きい湖でしたが、農地拡大のために、干拓され今の姿になっています。しかし、米の消費量は減少しており、米が余るようになってきています。そこで国は米の減反政策を開始し、他の作物を栽培する転作を進めています。
果樹栽培
盆地を中心に寒暖差を利用した果樹栽培が行われています。山形盆地のおうとう(さくらんぼ)、ぶどう、西洋なし(ラフランス)、福島盆地のもも、津軽平野のりんご栽培が特に有名です。
東北地方の水産業
三陸海岸沖は暖流対馬海流と寒流千島海流がぶつかる潮目があり、プランクトンが豊富で多くの魚が集まる豊かな漁場になっています。八戸、気仙沼、石巻は有数の漁港です。また、陸奥湾ではほたて、三陸海岸でのわかめ、松島湾でのかきの養殖も盛んです。
関連問題プリント 東北地方の地形・農林水産業
東北地方の工業
現在は高速道路や空港の開業により物資の運搬が容易になり、自動車工場や半導体工場が点在しています。半導体工場が多い為、東北地方はシリコンロードと呼ばれることもあります。
関連問題プリント 東北地方の工業
伝統工業・伝統文化
東北地方の伝統工芸品やお祭りを見てみましょう。東北地方では農作業ができない冬期間に副業として、工芸品が作られており、現代に通ずる伝統工業となっています。それぞれの特徴と成り立ちをリンクさせて覚えておく必要があります。頻出問題です。
伝統工芸品
寒い地域では冬の間の農業が出来ないため、冬の間の副業として発達した伝統工業が発展しています。東北地方でおさえておくべき伝統工業(伝統工芸品)は以下の通りです。
青森県:津軽塗(漆器)
青森県弘前市を中心に江戸時代より300年以上の歴史のある伝統工芸品です。明治時代初頭から「津軽塗」と呼ばれ発展しています。
秋田県:大館まげわっぱ(秋田杉薄板から作る曲物)
日本三大美林として知られる天然秋田杉を原材料として使用し、生の木の板を特殊な技法を使って曲線に曲げて作られる伝統工芸品です。継ぎ目は山桜の皮で綴じています。
岩手県:南部鉄器(鋳物)
17世紀初めより盛岡市で始まった伝統工芸品です。南部藩主が京都から良質な原材料のある盛岡に釜師を招き、茶の湯釜を作らせたのが始まりです。
宮城県:こけし(温泉場で発売された伝統玩具)
江戸時代後期から東北地方の温泉地の湯治客向けに売られた轆轤挽きの木製の人形玩具の土産物です。木地師が作ったこけしは心身回復と五穀豊穣、山の神と繋がる縁起物と考えられていました。
福島県:会津塗り(漆器)
室町時代に漆の木の植樹を奨励されたことが始まりで、400年前の安土桃山時代に産業として発展しました。網目が細かい特徴を持ち、松竹梅と破魔矢と組み合わせた模様は会津絵とされています。
- あかべこ:会津地方の郷土玩具。伝統工業ではないが、よく出題される。
東北三大祭り
古くから主に収穫前に豊作を願う、伝統的な祭りが存在します。現在では、観光対象として注目され、東北各県で何らかの祭りが開催されていますが、ここでは戦前から開催されている歴史的な3つを覚えましょう。
青森県:青森ねぶた祭
人形をかたどった高さ5m、長さ9mの山車灯籠が、街を練り歩きます。奈良時代に中国から渡来した七夕祭と津軽の古来からの習俗が一体化したものです。
秋田県:秋田竿燈まつり
毎年8月3日から6日に秋田市で行われる豊作を祈る、重要無形民族文化財に指定された祭です。連なる提灯を米俵に見立てて、額や腰、肩などに乗せて街を練り歩きます。
宮城県:仙台七夕まつり
江戸時代に仙台藩祖の伊達政宗が婦女子の文化向上を奨励するために始めた祭です。仙台市内の街を約3000本の色鮮やかな巨大な七夕飾りが埋め尽くします。
世界遺産など
東北地方の世界遺産などを見てみましょう。東北地方にある世界遺産は、1993年に世界自然遺産に認定された白神山地、2011年に世界文化遺産に認定された平泉です。明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」の世界文化遺産として、橋野高炉跡(岩手県釜石市)が、九州・山口に集積する対象遺産から1カ所だけ遠く離れて認定されています。
白神山地
青森県と秋田県の境に位置する白神山地にはブナの原生林が広がっています。1993年に世界自然遺産に登録されました。
平泉(岩手県)
平安時代末期、奥州藤原氏が栄えた時代の寺院や遺跡群が多く残ります。黄金の国ジパングの発祥ともされ、中尊寺金色堂をはじめとするいくつかの歴史的建築物などが平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-として2011年に世界文化遺産に登録されました。
橋野鉄鉱山(岩手県釜石市)
明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業の一部として2015年に世界文化遺産に登録され
ました。
松島(宮城県)
日本三景のうちの一つ。多島海である松島湾一体の景観が美しく、古来から和歌にも詠まれている。奥の細道にも登場する。
奥の細道
江戸時代の俳人、松尾芭蕉による句集及び紀行文。江戸を発ち、東北~北陸地方をおよそ150日かけて歩いた。東北地方に読まれた代表的な句は以下の通り。
白河の関(福島県)
卯の花を かざしに関の 晴着かな
曽良 ※芭蕉の弟子の句
松島
松島や 鶴に身をかれ ほととぎす
曽良 ※芭蕉の弟子の句
平泉
夏草や 兵どもが 夢の跡
山寺・立石寺(山形県)
閑さや 岩にしみ入る 蝉の声
最上川
五月雨を あつめてはやし 最上川
都市と交通
東北地方の交通事情や問題点を見てみましょう。南北に並列する山地が交通網を支配しているのが特徴です。交通網に沿うように都市が発展しています。2011年の東日本大震災による被害も大きく受けました。
高速道路
東北自動車道が東京と青森を結び、山形、秋田への高速道路もここから分岐しています。
新幹線
東北新幹線が東京と新青森を結び、高速道路と同じく、山形県、秋田県へもミニ新幹線として山形新幹線、秋田新幹線が分岐しています。
仙台市
宮城県の県庁所在地で、東北地方唯一の政令指定都市。戦国時代以降の植林の結果、「杜の都」と呼ばれるようになった。
東北都市・交通網の問題点
各県に高速道路や新幹線が開業し、首都圏との結びつきが強い。東京まで2~3時間程度で結ばれたため、若者を中心に人口が首都圏へ流出するという問題も発生しています。これをストロー現象と呼びます。東京との結びつきが強い一方、各県同市の結びつきが弱く、各県で過疎化がますます進む中で、東北地方が一丸となって地域の魅力を向上させる取り組みが必要です。
まとめ
分野別の学習でまだ扱っていない単語も多く出てきています。これといった大きな特徴や、著名な観光地がなく、なかなか難しいかもしれませんが、一つ一つ、着実に覚えていきましょう。関東地方に住んでいる人なら、長期休暇や連休のお出かけ先としても、身近な東北地方。入試問題では、実際の旅行ルートをモチーフとした出題もしばしばみられます。東北地方全体のそれぞれの位置関係は覚えなければなりません。次回、お出かけの際には是非地図帳を片手に、渡った川、目の前の山の名前をチェックしてみてください。新たな発見がたくさんあるはずです。
この章の関連問題
下記にてこの章の関連問題もご用意しました。
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第28章の問題まとめ
Yotube動画で第28章『東北地方の自然・歴史・産業』の問題を解いてみましょう!全50問です。