中学受験 地理シリーズ。第26回目は『日本の交通の歴史 – 狭くなる日本、近づく世界2』です。
前回の講義『日本の交通の歴史 – 狭くなる日本、近づく世界』では、鉄道と自動車のメリット・デメリットを見てきました。日本の交通、通信の学習は今回で終了です。日本の交通のうち、航空、海運、それに通信分野を扱います。航空機は我々の生活に身近な存在になりましたが、海運、つまり船の利用はあまり馴染みがないかもしれません。しかし、日本は周囲を海に囲まれた島国です。海運は古くから、日本の交通の中心的存在でした。今でも、たくさんの貨物が船で運ばれています。
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航空のメリット、デメリット
長距離の移動に欠かせない航空機。東京から北海道や九州に行くのに欠かせない存在です。航空機にはどのようなメリット(すぐれている点)、デメリット(すぐれていない点)があるのか、書き出してみましょう。
高度経済成長期以降、飛行機を利用する人は伸び続けています。近年は、東南アジア発祥のLCC(Low Cost Carrier:格安航空会社)と呼ばれる低運賃の航空会社が日本にも登場し、利用者を増やしています。
LCC(格安航空会社)の特徴
機内食など、過剰なサービスを廃止し、コストを削減し、運賃を安くしています。しかし、収益性が低い為、日本のLCC会社は倒産や合併が相次いでおり、ビジネスモデルとしてはまだ確立していません。ただ、運賃は新幹線よりも安くなり、また中国や台湾、韓国までも1万円以下で出かけられる時代がやってきました。特に九州地方などからは、東京へ行くよりも、これら近隣諸国に出かけるほうが安くて、近く、結びつきを強めています。
一方で、貨物輸送でも鮮度が重要な高級食材(高級魚など)や、高価で小型、軽い工業製品(半導体など)など、運賃の比較的高い航空貨物では、輸送量が伸びています。日本には多くの空港がありますが、特に羽田空港、成田空港は混雑が激しくなっており、飛行機の発着回数が限界に達しています。滑走路の追加や飛行経路の見直しで発着回数を増やす努力をしています。羽田空港は長らく、国内線専用空港として機能(台湾行きを除く)していましたが、2010年に第四滑走路が完成し、同年から再び国際線が就航するようになりました。しかし、滑走路の新たな建設や、飛行ルートの変更は騒音などを理由に、近隣住民からの反対も根強く残っています。
- 成田空港は日本の玄関口でありながら、24時間の発着が認められていない!
首都圏を中心に過密の空港がある一方で、地方の空港は利用者が伸び悩んでおり、特に新幹線の開業で大きな影響を受けている空港もあります。新幹線と飛行機のシェアは所要時間およそ4時間を境に逆転すると言われており、東京から新幹線で4時間以内で結ばれた都市の空港は、東京からの路線自体が廃止されたところもあります。
※東京~札幌・東京~福岡間は世界有数の航空輸送量を誇っています。
アジアゲートウェイ構想
アジアゲートウェイ構想とは、アジア各国と積極的に交流を図り、日本の役割や地位を高めようとする構想のことです。特に航空分野では、「航空自由化(オープンスカイ)」が掲げられており、関西国際空港や中部国際空港での自由化を目指すとされています(成田空港、羽田空港では既に一部国との自由化済)。また、羽田空港・成田空港の発着枠拡大、アクセス改善が盛り込まれています。
航空自由化(オープンスカイ)とは
自国とオープンスカイ協定を結んだ相手国との間で、自由に路線や便を設定できる仕組みです。1995年頃にアメリカで提唱された空港協定です。日本では2010年のアメリカとの締結に始まり、韓国、シンガポール、マレーシアなど30カ国に及んでいます。
ハブ空港
日本の周辺には、日本の空港よりも大きな、巨大とも言える空港を持っている国があります。このような巨大空港は、単にその国へ到着する客だけでなく、第三国への乗り継ぎにも多く利用されています。特に近年増加しているLCCはこのような巨大空港での乗り継ぎを前提として、幅広いネットワークを構築しています。
この路線網を自転車の車輪に見立てると、放射状に伸びる航空路線がスポークで、その中心に当たる空港がハブと見なせることから名づけられました。日本の空港は発着枠が少ないだけでなく、空港内の乗り継ぎ客用の施設が少ないなどの問題があり、ハブ空港化が遅れています。世界の航空路線は直行方式からハブ方式に移り変わりつつあり、ハブ空港の重要性がますます高まっています。
羽田新ルート
東京オリンピック開催に合わせ、羽田空港の発着枠が不足するため、東京都心部を低空飛行し着陸する新ルートが設定されました。
新ルート導入で羽田の1日当たりの発着枠を50便増やせるとしていますが、人口密集地域を低空で飛行するため、騒音に対する苦情が上がっています。
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海運のメリット、デメリット
では、最後に船で旅客や貨物を運ぶ、海運のメリット(すぐれている点)、デメリット(すぐれていない点)を考えてみましょう。北海道から四国、九州まで橋で繋がってしまった今、船に乗る機会はかなり減ってしまいましたが、貨物ではまだまだ海運のシェアも高くなっています。
現在、日本の海運はほとんどが貨物輸送です。
中にはフェリーとして、トラックと共に旅客の受け入れをしている海運会社もありますが、現在主流の貨物船はコンテナ船です。コンテナは貨物の積み下ろしが簡単で、港からトラック、鉄道へと、次の交通機関にスムーズに移すことが出来ます。
コンテナ船は輸送の効率を高める為に大型化が進んでおり、港もそれに対応した設備を持たなければならなくなっています。
大型のコンテナ船の特徴
郵便
手紙や封筒など、郵便物を集配する郵便サービスは、長らく私たちの生活に欠かせないものでした。どんなに山奥であっても、離島であっても、人が住んでいる限り、全国均一の料金で、平等に郵便サービスを受けることが出来ます。これを「ユニバーサルサービス」と呼びます。従来、郵便は国の事業でしたが、2007年に民営化されました。しかし、民営化以降もユニバーサルサービスは維持されています。近年、インターネットのメールが主流になり、郵便物の数は減っています。特に外国向けの郵便の数が大きく減少しています。一方で、インターネットショッピングする人々が増えたことから、荷物の数が増えています(日本郵便ではゆうパックなどの名称で荷物の集配も行っています)。
情報通信(電話・インターネット)
各家庭に設置されている固定電話が普及したのは高度経済成長期の頃で、1970年代に大きく増えました。一方で、1990年代中ごろから携帯電話を持つ人が一気に増え、2000年には固定電話の数を携帯電話が上回るようになりました。2011年には携帯電話の契約数が日本の総人口を上回り、理論上、日本人1人が1台以上の携帯電話を持っていることになります。また、2010年以降はいわゆるフィーチャーフォンと呼ばれる携帯電話から、スマートフォンへの切り替えが一気に進んでいます。2018年にはフィーチャーフォンの出荷台数が0台になり、従来型の携帯電話はほぼ日本国内で出荷されなくなっています。
従来型の携帯電話では電話やショートメール(SMS)などがメインの機能でしたが、スマートフォンはよりパソコンに近い機能を有するようになり、また、アプリケーションをダウンロードすることで、生活に欠かせないあらゆるサービスを受けられるようになりました。その結果、アプリケーションで会話やメールも可能なため、電話やSMSを使う回数は減少しています。
こうしたスマートフォンの普及を背景に、2020年から5Gと呼ばれる超高速の通信規格が日本でも使えるようになりました。動画などの、通信量の多いものも簡単に見ることが出来るようになり、動画配信サービスの拡大で、テレビを見ない人も増えています。
しかし、日本はスマートフォンの開発に大きく遅れ、現在、国内メーカー製のスマートフォンはほぼ発売されていません。
スマホ内部のシステムやアプリケーションについても、GoogleやAppleといったプラットフォーマーと呼ばれる外国企業のものを使用しているため、従来、フィーチャーフォンを製造していた日本の通信機器メーカー業界は大きな打撃を受けています。
インターネットサービスを見てみても、検索サイトやネットショッピングサイトなどで世界的に事業を展開しているのはアメリカのIT企業で、最近は中国企業も台頭しています。日本企業の中で、世界で利用されるサービスを提供している企業はほとんどありません。IT企業は利用者をたくさん集め、個人情報を収集してデータを囲い込んで活用し、利益を得ています。Face BookやTwitterなど、多くのアプリが無料なのはこのためです。データは企業の競争力の源泉であり、日本の企業は外国企業に対し、不利な状況になります。加えて個人情報が適正に管理されているのかなど、外国企業への依存は利用者の不安にもつながっています。
情報通信についてよく出題される問題を少し解いてみましょう。
問題1 下の表を読み取り、またその理由を人々の生活の変化の面から説明しなさい。
ヒント 表に関する記述問題のテクニック
まず、表に書かれている内容を理解し、それを記述する(この時点では表に書かれていることをそのまま書く)。そして、それに対するあなたの気づき、考えを書く(今回の場合は上で書いたことに対する原因・理由)。
▼ 解答をみる
まとめ
交通・通信は皆さんにも身近な問題である一方で、日々刻々と技術が進化している分野です。特に近年のインターネットなど通信については、わずか数年で状況が変化します。家族の人にかつての旅行や、携帯電話が無い時代の連絡手段について聞いてみるのも面白いでしょう。また、最新のニュースにも常にアンテナをはっていてください。東京オリンピックは2020年の開催は見送られてしまいましたが、2021年に開催された場合、入試では何らかの形で出題される可能性が高いです。外国からのお客さんが増えますので、交通やインターネット事情の時事問題は要チェックです。
この章の関連問題
下記にてこの章の関連問題もご用意しました。
何度も解いて知識を体に染み込ませましょう。
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第26章の問題まとめ
Yotube動画で第26章『日本の交通の歴史』の問題を解いてみましょう!全50問です。