中学受験 地理シリーズ。第2回目は『国土の広がりと国際問題 – 領土・海流・半島』です。
前回の講義『地球上の日本の位置 – 東西南北の端・緯度経度・時差』では、日本が地球上のどのあたりに位置するのかを見てきました。今回はもう少しズームアップし、日本と日本の周辺にある海や海流、また国々に目を向けてみましょう。
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日本の国土の広がり
島国である日本では、他国との国境をあまり意識せずに生活していますが、いくつかの国とは日本海や東シナ海を介して近接しています。わからない人は地図帳で調べてみましょう。
日本列島の基本情報
海外旅行では、飛行機に乗ることが当たり前になってしまいましたが、かつては主に日本海側の港(敦賀港が有名)から船でロシアに渡り、シベリア鉄道などを利用してヨーロッパを目指しました。東京駅からヨーロッパまでの切符を購入出来た時代があったのです。現在でも、山口県下関港や福岡県博多港から韓国釜山を結ぶフェリーや高速船が運行されています。九州・沖縄地方を中心に見た場合、東京よりも韓国や台湾の方が近い場合もあり、海外は案外身近な存在です。
地図帳で日本の位置関係をもう一度確認してみてください。
日本が近接している国々
- ロシア
- 中華人民共和国(中国)
- 大韓民国(韓国)・朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)
- 台湾
このうち、台湾を除く3つの国とは領土問題が発生しています。
その土地(島)がどの国に属するか、長らく論争が繰り広げられています。ニュースで聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。また、ある程度常識の範囲内として問われることも多く、各国の基本情報や時事問題にはアンテナをはっておくようにしましょう。
日本の周辺にある国についてよく出題される問題を少し解いてみましょう。
問題1 日本の近くにありながら、正式な国交がない。拉致問題などの外交問題も抱えている国は?
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問題2 日本の45倍という世界一の面積を誇る国は?
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問題3 世界一多い人口を抱える国。1972年にこの国からパンダが贈られてきた国は?
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問題4 1972年に国交を断絶しているが、東日本大震災時に数百億円の義援金を送ってくれた親日国は?
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問題5 2000年にサッカーワールドカップをこの国と共同で開催。しかし、近年では徴用工訴訟の再燃など外交問題も多い国は?
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領土問題
さて、この章で一番大切な領土問題です。中学受験ではよく出題される重要テーマです。北方領土・尖閣・竹島をおさえておけば良いかと思います。順にみていきましょう。
北方領土(北海道)
ロシアとの間で領有権が争われている島々です。歴史的にも1875年(明治8年)の千島・樺太交換条約にて日本の領土ということが証明されていますが、太平洋戦争後、ロシアが実効支配しています。北方領土に含まれるのは千島列島の4つの島々です。
- 択捉島
- 国後島
- 色丹島
- 歯舞諸島
1つずつ特徴をみていきましょう。
択捉島 日本最北端の島(北緯45度)
択捉島(えとろふとう)は、日本の最北端の島として位置しており、千島列島最大の島であり、火山島です。あまり見慣れない漢字を使い独特の読み方をするので、誤字のないように気をつけましょう。
国後島
国後島(くなしりとう)は、知床半島の東に位置し、千島列島で2番目に大きい島です。沖縄本島よりも大きな島です。根室海峡の向かい26km程の距離にあるので、羅臼町から間近に見られます。簡単な漢字表記ですが、読み方が独特なので注意が必要です。
色丹島
色丹島(しこたんと)は、根室半島の東に位置する島です。昭和初期までは日本18景に数えられた程の美しい島でしたが、現在、色丹郡色丹村はロシアに実効支配されています。簡単な漢字表記ですが、読み方が独特なので注意が必要です。
歯舞諸島(群島)
歯舞諸島(はぼまいしょとう)は、根室の納沙布岬の沖合4kmに位置する諸島です。昆布が有名な島です。歯舞群島と呼ばれることもあり、1937年に日本が建設した灯台があり昆布の良い漁地となっています。読み方が難しいので、しっかりと正しい読みで覚えておきましょう。
北海道根室沖合に連なる島々で、ロシアが日本のこんな近くにまで進出していることに驚かされます。
竹島(島根県)
韓国との間で領有権が争われている島。歴史的、文化的にも日本の領土であることは明らかになっていますが、韓国が実効支配しています。島根県は2005年に竹島の日を制定しました。
尖閣諸島(沖縄県)
中国との間で領有権が争われている島々です。歴史的、文化的にも日本の領土であることは明らかになっており、中国に対抗するため、2012年には一部の島を除いて、日本政府が国有化した。それでも中国漁船の違法操業や、中国海軍、空軍の領海、領空侵犯が後を絶ちません。
関連問題プリント 北方領土・最東西南北島・他 重要な島
島の所有にこだわる理由
そもそも、なぜ島の所有にこだわるのでしょうか?
理由は、排他的経済水域(海岸線からの半径200カイリ:約370㎞の水域)を失うからです。
あまり知られていませんが、海がどの国に属しているかは、長らく曖昧な状態が続いていました。船には航行の自由が認められており、今でも全ての国の船舶は海を自由に通行(無害通航:通行するだけ、漁業などは禁止)できます。1970年代頃から、沿岸国が漁業の保護を叫ぶようになり、200カイリ漁業専管水域が認められるようになりました。その後、魚などの海産物だけでなく、石油や石炭などの海洋資源も沿岸国のものと主張されるようになり、名称が排他的経済水域に変更されました。
なお、200カイリ外では引き続き、どの国にも属さず、常識の範囲内で自由な活動が許されています。つまり、領土問題が発生している島周辺の海産物や海洋資源に注目して、各国は領有権を主張しているのです。
国家の主権がおよぶ領域
続いて、国家の主権が及ぶ領域について下のイラストをみながら1つ1つみていきましょう。
国家の主権がおよぶ領域は、領海、領空、排他的経済水域、公海です。領海とは海岸線から12海里(約22km)、領空とは領土と領海の上空、排他的水域とは、海岸線から200海里(約370km)、公海とは全ての国に解放された自由な海洋のことです。
領海
海岸線から12カイリ。国の主権(その国の法律など)が及ぶ範囲、領土(陸地)と同じ扱い。ただし船の通行は自由。
領空
領土と領海の上空。
排他的経済水域
海岸線から200カイリ、海産物、海洋資源は沿岸国に属す。他国の船が漁業活動や資源の掘削活動などをすることは出来ない。
公海
200カイリより外。誰にも属さない海。全ての国に開放され、漁獲の自由などが認められている。公空もほぼ同義だが、12カイリより外が公空となる(資源がないため)。
大陸棚(たいりくだな)
排他的経済水域の設定により、法的な意味合いは薄れつつある。中学受験の社会では、水深100m程度の浅いなだらかな海のことを指す。太陽光線が十分に届くため、豊かな漁場となる。日本の近海では東シナ海に広がっている。
日本のまわりの海と海流、主な大陸や半島
近年、日本人の魚離れが進んでいると言っても、魚消費量は世界3位(2019年)です。日本人が魚好きなことに変わりはありません。世界には日本以外にも海に囲まれている国は多く存在します。しかし、日本人ほどに魚を食べません。日本人がこのように魚をよく食べるのは、日本の周辺で多くの魚が獲れることに他なりません。
どうして、そんなに多くの魚が獲れるのでしょうか?
それは日本の周りを流れる海の流れ、海流にあります。日本の近海では南から流れ込む温かい海流、暖流と北から流れ込む冷たい海流、寒流が交わります。つまり、日本の近海は温かい海に棲む魚、温かい海に棲む魚いずれも獲れるだけでなく、暖流、寒流が交わる潮目というポイントにはプランクトンが多く発生し、非常に豊かな漁場となっているからです。
- 海流は日本各地の気候にも影響を与えているので必ず覚える!
海と海流 主な大陸や半島
日本の周りの「海」
中学受験対策で絶対におさえておきたいのは、日本の周りの海です。日本は4つの海に囲まれているので、まずは海の名前と位置を正確に覚えましょう。それぞれの海には獲れる水産資源に違いがあるので、そちらの特徴も合わせて覚えてしまいましょう。
- オホーツク海
- 太平洋
- 日本海
- 東シナ海
1つずつ特徴をみていきましょう。
オホーツク海
オホーツク海は、樺太、千島列島、カムチャッカ半島に囲まれた、北海道の北東に位置する海を指します。オホーツク海の表面面積は約152.8万㎢、平均水深は838mです。植物プランクトンが豊富でサケ、マス、タラ、カニ、コンブなどの漁業資源の宝庫です。
太平洋
太平洋はアジア、オーストラリア、南極、南北アメリカの大陸に囲まれた世界最大の海洋を指します。日本列島は太平洋の周縁部に位置しており、日本の実に20の都道府県が太平洋に面しています。日本とは深く関わりのある海洋です。
日本海
日本海は、西太平洋の縁海で日本列島と朝鮮半島などに囲まれた海洋を指します。日本海に面している都道府県は15府県です。日本海側の海底表面には塊状のメタンハイドレートが存在しており、資源の少ない日本にとって貴重な資源となります。現在、エネルギー源として利用するための技術開発が進められています。
東シナ海
東シナ海は太平洋の西部の海で、南西諸島とユーラシア大陸に挟まれた海洋を指します。東シナ海ではガス田の開発が行われています。資源の少ない日本にとって重要な開発ですが、海域をめぐり中国と争いが起こっています。海域を学ぶ際は、周辺国との関係性も含めて覚えておく必要があります。
日本の周りの「海流」
中学受験対策で絶対におさえておきたいのは、日本の周りの海流です。太平洋側の暖流、寒流と日本海側の暖流、寒流の4つです。名前とともに流れにのってやってくる水産資源も合わせて覚えるといいでしょう。
- リマン海流
- 対馬海流
- 千島海流(親潮)
- 日本海流(黒潮)
1つずつ特徴をみていきましょう。
リマン海流
リマン海流は、シベリア南東部沿岸を南向きに流れ、間宮海峡付近からユーラシア大陸に沿って日本海を南下する海流を指します。日本海の中央で北からの冷たいリマン海流と南からの暖かい対馬海流がぶつかることで、栄養に富んだ良い漁場になります。
対馬海流
対馬海流(つしまかいりゅう)は、九州の西沖の黒潮の一部が東シナ海と混じり対馬海峡を通って日本海に流入する暖流です。厚さ200mで流速0.5から1ノットという速さで蛇行しながら流れるため、多くの魚や栄養を運びます。
千島海流(親潮)
千島列島に沿って南下する海流で親潮と呼ばれる方が多いかもしれません。北海道南東岸から三陸沖まで南下するので、オホーツク海弥ベーリング海の氷が溶けて生じた塩分を含んでいます。
日本海流(黒潮)
東シナ海を北上してトカラ海峡から太平洋に入り、日本列島に沿って東に向かう黒潮は、やがて房総半島沖に達する暖流です。黒潮はプランクトンが少なく透明度が高いため黒潮と呼ばれています。世界的に見ても大規模の海流で、親潮とぶつかることで良い漁場を生み出します。
- リマン海流は中学受験ではあまり出題されないが、それ以外の3つは超重要!
主な「大陸や半島」
世界は6つの大陸に分けられます。それぞれの大陸、半島の名前はしっかりと覚えておく必要があります。近年の世界情勢を鑑み大陸だけでなく半島を出題するケースも増えているので、有名な半島は漏らすことなく暗記しましょう。
1つずつ特徴をみていきましょう。
- カムチャッカ半島
- 樺太
- 千島列島
- ユーラシア大陸
- 遼東半島
- 南西諸島
カムチャッカ半島
カムチャッカ半島は、ユーラシア大陸の北東部にある半島です。千島列島の先にあり、領土問題に関連して出題されることがあります。半島の位置や特徴をまとめておくといいでしょう。
樺太
樺太は、領土をめぐる問題で必須のキーワードとなっています。1855年に結ばれた日露和親条約以降、日本とロシアの間で樺太は重要なポジションにあります。時代背景とともに、位置やいつどちらの領になったのかを押さえておきましょう。
千島列島
日本とロシアの間で領土をめぐる問題があり、1875年の樺太・千島交換条約で、千島列島は日本領になりました。時代背景とともに、千島列島の位置、名称、資源などもしっかりと押さえておきたいですね。
ユーラシア大陸
世界で最も広い大陸であるユーラシア大陸について、位置や形を把握しておきましょう。ユーラシア大陸にある主な国々を知ることと、気候や文化、日本との関わりまで合わせて覚えておきましょう。
遼東半島
遼東半島(りょうとうはんとう)は、中国の遼寧省南部にある半島です。東は黄海、西は遼東湾を望みます。日清戦争後に日本に割譲された半島です。三国干渉や日露戦争などの重要キーワードとともに、しっかりと歴史の流れを掴んでおきましょう。
南西諸島
南西諸島は、21世紀に入ってから日本の防衛の要として重要視されています。単に、位置や島の名称が問われるだけでなく、なぜ南西諸島に注目が集まるのか、などの時事問題も視野に入れた出題がされることを想定した学習が必要です。
関連問題プリント 日本の海・海岸線・海流
関連問題プリント 半島・岬・湾・海峡
まとめ
日本周辺の国々、ロシア、中華人民共和国(中国)、大韓民国(韓国)、朝鮮民主主義共和国(北朝鮮)、台湾とは歴史的結びつきは強いが、現在では領土問題など、いくつかの問題を抱えている国も多い。
- 北方領土:ロシア
- 竹島:韓国
- 尖閣諸島:中国
海岸線から200カイリの海洋資源についてはその沿岸国に権利がある(排他的経済水域)。
- 寒流:リマン海流・千島海流
- 暖流:対馬海流・日本海流
海流については、今後の地域別の産業の話、周辺国ついては今後の歴史の話にも繋がるので、忘れないようにしっかり定着させてください。
この章の関連問題
下記にてこの章の関連問題もご用意しました。
何度も解いて知識を体に染み込ませましょう。
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第2章の問題まとめ
Yotube動画で第2章『国土の広がりと国際問題』の問題を解いてみましょう!全50問です。