中学受験 地理シリーズ。第18回目は『日本の水産業と問題点』です。
前回の講義『日本の畜産業と問題点』では、日本の畜産の特徴と畜産業の抱える問題について見てきました。第一次産業の最終回となる今回は魚を捕る漁業、水産業について学習します。皆さん、魚を1週間にどれくらい食べていますか?
肉を食べる機会が増えた今でも、毎日肉を食べるという人はいないはずです。昔ながらの焼き魚はあまり食べないといっても、やっぱり回転寿司は好きと言う人も多いのではないでしょうか? かつて、日本人は世界で最も魚介類を消費していました。ただ、現在は減っているものの、それでも韓国、ノルウェーに次いで、3位の消費量を誇っています。ただし、世界的な健康ブームで高たんぱく、低カロリーな魚が注目されており、世界の消費量は伸び続けています。
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漁業の種類と漁法
水産業では県別の漁獲高は冒頭で紹介した理由により、あまり出題はされません。その一方で、漁業の種類やそれに合わせた漁法が狙われる可能性が高くなっています。それぞれの違いをしっかり覚えてください。
漁業の種類と漁獲量 (順位は2019年)
漁業の種類と漁獲量に関連する出題は、ポイントを押さえることで覚えやすくなります。漁業の種類は、陸地に近い方から、沿岸、沖合、遠洋と分類されています。漁獲量は、グラフを暗記するよりも特徴を掴むことをおすすめします。
1位 沖合漁業
農林水産省の漁業種類イラスト集より
数日間、30~50km沖での漁業。年によるいわしやサンマの激減などにより、大きな影響を受ける。原因は不明。
2位 沿岸漁業
農林水産省の漁業種類イラスト集より
日帰り・海岸の近くでの漁業。半農半漁(規模が小さい)、海の汚れなどの影響も受ける。
3位 養殖業(養殖漁業)
農林水産省の漁業種類イラスト集より
つくり育てる漁業。大きくなるまで、沿岸近くのいけすなどで育てる。ぶり、まだい、のりや、かき、ほたてなどの養殖が有名。海の汚れの影響を受ける。赤潮やアオコ。
4位 遠洋漁業
農林水産省の漁業種類イラスト集より
数ヶ月以上・大型船団での漁業。1965年~1970年頃にかけて、日本の漁業の主力(1位)だったが、200カイリ漁業専管水域(排他的経済水域)の設定後、世界の海で自由な漁業が出来なくなったため、大きく衰退。
農林水産省の漁業種類イラスト集より
かつて遠洋漁業がおこなわれていた海
北洋漁場:オホーツク海・ベーリング海(※さけ・ます・かに)
南方漁場:南太平洋(※かつお・まぐろ)
いろいろな漁法と捕れる魚
中学受験ではかなり高い頻度で、絵や写真で漁法や魚の種類を問われます。言葉だけ暗記するのではなく、漁法をイメージしながら採れる魚とリンクさせて覚えていきましょう。
1本釣り
網を使わないため、魚を傷つけないが、一度にたくさんの魚はとれないため、かつおやマグロなどの高級魚向けの漁法。
さし網
魚の通り道に帯状の網をしかける。その網に魚を絡めてとる。網に魚が刺さったような形になることから、さし網と呼ばれる漁法。
定置網
沿岸を回遊する魚の通り道にしかけ、魚の習性を利用して網の奥に導く漁法。
はえなわ
日本で開発された漁法で、1本の幹となる縄に枝縄を一定間隔で垂らす。長さは数百キロに及ぶこともある漁法。
底引き網
海底付近に生息するエビやカニ、貝類、ヒラメ、かれいなどをまとめてとる漁法。
巻き網
夜間、光にさんまが集まる習性を利用してイワシ・アジ・サバなどをまとめてとる漁法。
棒受け網
大群で回遊する魚を網で囲ってサンマなどをまとめてとる漁法。
関連問題プリント 漁業の種類と主な漁法
日本の漁業の特徴
周囲を海に囲まれた日本では昔から漁業が盛んです。遠浅の海が続く東シナ海の大陸棚、また潮目が発生する三陸沖はプランクトンが多く発生し、豊かな漁場となっています。また、オホーツク海では寒い海に生息するさけ、ます、かになどの漁場となっています。魚介類は日本人にとって重要な食べ物でした。
- 日本の主な漁場:三陸沖、東シナ海、オホーツク海
しかし、戦後は日本人の食生活が大きく変化し、魚介類よりも、畜産物からより多くの動物性たんぱく質を取るようになっています。日本人の魚を食べる量は2001年の1日あたり110グラムをピークに減少し続けています。2018年には66グラムにまで減少しています。
日本の漁業は高度経済成長期以降、盛んになっていきました。遠洋漁業では冷凍設備の整った大型船を続々投入したため、1960年代には2倍以上の漁獲量が急増し、当時の日本の漁獲高は世界一を誇っていました。しかし、1973年に発生したオイルショックを原因として燃料費が高騰し、さらに200カイリ漁業専管水域(排他的経済水域)が設定され、日本の海域外での漁が出来なくなりました。1970年以降は沖合漁業が日本の漁業の中心でしたが、近海の魚の減少により、その漁獲量も急速に減っています。
日本の漁獲量と輸入量(2018年)
中学受験では、漁獲量と輸入量の関係について出題されます。漁獲量と輸入漁は世界の情勢によって大きく影響されます。どの時点のグラフや表なのかをしっかりと把握して推察する必要があります。
漁獲量
日本は世界 第8位の漁獲量(2018年時点)。世界の漁獲量ランキングは中国・インドネシア・インド・アメリカ・ロシア・ペルー・ベトナム・日本。ただし、このランキングも年によって大きく変動する。
輸入量
日本は世界 第2位の輸入量(2018年時点)。なお、輸入量ランキングはアメリカ、日本、中国の順(ただし、まもなく中国が日本の輸入量を上回る)
日本の魚介類の輸入先ランキング
- [1位] 中国
- [2位] チリ
- [3位] アメリカ
- [4位] ロシア
- [5位] ベトナム
日本が輸入している魚介類
- [1位] さけ/ます(サーモン) 輸入先:チリ、ノルウェー、ロシア
- [2位] まぐろ 輸入先:台湾、中国、韓国
- [3位] えび 輸入先:ベトナム、インド、インドネシア
主な漁港
漁獲量は毎年変化しますが、漁港ごとに水揚げされる魚はほぼ決まっています。寒流に棲む魚、暖流に棲む魚はどんな種類なのかを考えながら、港とセットで覚えましょう。
- 寒流魚:さけ・ます・にしん・たら・さんま。北海道や東北、日本海側で主に水揚げされる。
- 暖流魚:まぐろ・かつお・あじ・さば・いわし。関東以西の太平洋側で主に水揚げされる。
主な漁港 | 特徴 |
釧路(北海道) | かつては遠洋漁業の中心。1991年まで水揚げ量日本一。いわし・たら・さんまなど |
八戸(青森県) | 三陸海岸北部。潮目があり、よい漁場。いわし・さば・いか |
気仙沼・石巻(宮城県) | 三陸海岸南部。東日本大震災で大きな被害。さば・いわし・さけ/ます |
銚子(千葉) | 利根川下流。日本一の水揚げ量。さば・いわし・まぐろ |
焼津(静岡県) | 遠洋漁業の基地。銚子に次ぐ第2位の水揚げ量。かつお・まぐろ |
境(鳥取県) | 日本海側の水揚げ量日本一。さば・いわし・あじ |
これからの漁業
世界の人口は増大し、魚介類の消費量が増加しています。しかし、一方では乱獲などにより、世界の魚の量は減っています。貴重な水産資源を守るため、近年では漁獲量の制限などが課せられており、2018年からは太平洋クロマグロも対象となりました。当たり前にすし屋に並んでいるマグロも、近い将来高級なネタになる日も来るかもしれません。
ですから、魚を増やす努力も必要です。そこで、現在増えつつあるのが、「養殖業」と「栽培漁業」です。前者は魚を稚魚から成魚まで育てるため、魚では、いけすでの飼育が可能なまだいやぶりなどが中心ですが、これまで難しかったまぐろの養殖も研究が進んでいます。
あまり聞きなれない言葉ですが、栽培漁業とは卵をふ化させ、稚魚が一定の大きさに育つまでは、人が育て、その後放流、自然の力で成長させた後、捕るという方法の漁業です。貝類の他、ひらめやまだいなど、近海の魚の他、帰巣本能(生まれた川に戻ってくる)のあるさけ/ますでも栽培漁業が行われています。
養殖されている主な魚介類(海面)
日本の養殖業では、魚類、貝類、海藻類、宝飾品のための真珠などバリエーションに富んでいます。品目ごとにどの地域で養殖されているのかまで押さえておきましょう。
- のり 佐賀県(有明海)
- こんぶ 北海道・岩手県
- かき 広島県(広島湾)・宮城県(仙台湾)
- ほたて貝 北海道(サロマ湖)・青森県(陸奥湾)
- ぶり 鹿児島県・大分県
- まだい 愛媛県(瀬戸内海)・熊本県
- 真珠 愛媛県(宇和海)・長崎県(大村湾)・三重県(英虞湾)
養殖されている主な魚介類(内水面) ※淡水
主な養殖業は海面で行われていますが、湖や内水面で行われる養殖もあります。技術力のある日本においては、リスクとコストの高い海面養殖から、淡水養殖にシフトを変えていく傾向にあります。時事問題に関連して出題されることも多いので、現状の養殖品目を押さえておきましょう。
- うなぎ 静岡県(浜名湖)
- こい 茨城県(霞ヶ浦)・長野県(佐久盆地)
- 金魚 奈良県(大和郡山)
まとめ
世界的に魚の消費量が増えている中、日本では減少しています。生産量、輸入量も年々減少し、漁師の減少、高齢化という問題も抱えています。しかし、魚抜きの生活は出来ないでしょう。今後、養殖業や栽培漁業の研究がますます進み、多くの魚が日本の近海で人工的に捕れるようになるといいですね。
この章の関連問題
下記にてこの章の関連問題もご用意しました。
何度も解いて知識を体に染み込ませましょう。
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第18章の問題まとめ
Yotube動画で第18章『日本の水産業と問題点』の問題を解いてみましょう!全50問です。