中学受験 地理シリーズ。第3回目は『日本の今と昔の地方区分 – 旧地方区分』です。
前回の講義『国土の広がりと国際問題 – 領土・海流・半島』では、日本の領土問題や、海と海流、主な大陸や半島について見てきました。今回は日本地理に対して苦手意識を持つきっかけになる可能性もある日本の地域や都道府県についての学習です。とにかく覚えることが多いです。
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色々な地方区分の仕方
47都道府県の学習に入る前に、まずは日本の地方区分を覚えましょう。簡単に言えばグループ分けです。地方区分は、便宜上近隣のいくつかの都道府県をまとめて、1つの地域としています。この分け方は様々ですが、基本的には文化的、歴史的に何らかの結びつきが強い都道府県がひとまとまりになっており、都道府県を覚える際にも、まずはこのグループを覚えておくかおかないかでは、定着度に大きな差が生まれます。
一般的な分け方は8地方区分ですが、それ以外にも分け方は存在します。考えてみましょう。
都道府県 8つの地方区分
北海道地方、東北地方、関東地方、中部地方、近畿地方、中国地方、四国地方、九州地方。誰もが1度は聞いたことのある名称ではないでしょうか?それぞれが、どこにあり、含まれる都道府県も地図帳で簡単にチェックしておきましょう。
- 北海道地方:北海道
- 東北地方:青森県・岩手県・秋田県・宮城県・山形県・福島県
- 関東地方:茨城県・栃木県・群馬県・千葉県・埼玉県・神奈川県・東京都
- 中部地方:静岡県・愛知県・山梨県・岐阜県・長野県・新潟県・富山県・石川県・福井県
- 近畿地方:三重県・和歌山県・奈良県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県
- 中国地方:岡山県・広島県・山口県・鳥取県・島根県
- 四国地方:香川県・愛媛県・徳島県・高知県
- 九州地方:福岡県・佐賀県・長崎県・大分県・熊本県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県
特に苦手な人が多いのが中部地方、中国地方です。中部地方は含まれる都道府県も多く、日本海側、太平洋側、それに内陸県と変化に富んでおり、高い比率で入試で出題される地方です。また、中国地方は日本海側を中心として、馴染みが少なく、鳥取・島根と似たような名前で、位置関係がごちゃまぜになる人もよく見られます。『昔と今の都道府県 – 県庁所在地・政令指定都市・旧国名』の単元でもう一度確認しますが、まずは地図帳と睨めっこしてみてください。気になる地名、行ったことがある場所、知っている山の名前や名産品などがあったら、書き出してみましょう。各地方別に自分でイメージカラーを作っておくのも、効率的に覚える方法の一つです。
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様々な媒体を利用しながら都道府県の知識を習得しましょう。
都道府県 その他の地方区分 5パターン
上で紹介した8地方区分は、あくまでも1つの分け方であって、実態に合っていない部分などもあります。他にも分け方がないか考えてみましょう。
(1)自然による区分 太平洋側/日本海側
問題1 太平洋側に面する都道府県と日本海側に面する都道府県を書き出してみましょう。
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問題2 どちらにも面さない都道府県、また両方に面する都道府県も書き出してみましょう。
▼ 解答をみる
問題3 北陸地方って聞いたことがあるのですが、どこですか?
▼ 解答をみる
(2)自然による区分 東日本/西日本
非常にざっくりとした分け方ですが、果たして日本を東と西に分ける自然の境界線はあるのでしょうか?
実は本州には東西を分ける大きな溝が存在しています。それが大地溝帯(フォッサマグナ)で、その西側の端が新潟県糸魚川市と静岡県静岡市を結んでおり、糸魚川静岡構造線、通称糸静線と呼ばれています。ちなみに、何故だか中学受験の地理ではこの糸静線=フォッサマグナと紹介されています。ともあれ、この線が日本列島を東西に分ける線に違いはなく、糸魚川付近では実際にその裂け目を見ることが出来ます。気になる人はフォッサマグナミュージアムに行ってみて下さいね。
(3)文化的な区分 東日本/西日本(うどんの汁の境)
先ほどわけた東日本/西日本の区分けですが、同じく東と西でも全く別の場所を境にすることも出来ます。
皆さんはうどんの絵を書くとき、汁を何色で書きますか?
茶色と答える人は、醤油が濃いめのうどんに慣れている東日本の人でしょう。黄色と答える人は、出汁メインの薄味に慣れている西日本の人でしょう。
問題1 うどんの汁の色が変わるのはどのあたり?
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(4)文化的な区分 東日本/西日本(電気の周波数)
東京から大阪に引っ越すとき、家電製品を買い替えないでそのまま使うと壊れたり、火災の原因になるということを知っていますか?
何故なら、電力周波数が東日本が50ヘルツなのに対し、西日本では60ヘルツだからです。どちらにも対応している家電製品も増えていますが、洗濯機や電子レンジ、扇風機などは注意が必要です。これは発電機が明治時代に輸入された際、関東にはドイツから50ヘルツの発電機が、関西にはアメリカから60ヘルツの発電機が輸入されたことに由来します。基本的には糸静線に沿って東西に分けられており、NTTの東西の境に似ていますが、電気周波数では新潟県や長野県の一部が西側に入っているという違いがあります。
ちなみに大規模災害で発電所が使えなくなった場合、東西で電力の融通が利かないというデメリットもあります。
問題1 東海道新幹線はどうやって走っているのですか?
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(5)結びつきによる区分
最後に、結びつきによる地方区分です。首都圏や関西地方という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。授業で習う関東地方、近畿地方と何が違うのでしょうか?
首都圏と呼んだ場合、関東地方の都道府県に加え、山梨県や新潟県も含まれる場合があります。天気予報では関東甲信越地方と紹介されることもあります。同じく、関西圏には福井県を含むこともあります。
さらにやっかいなのは、三重県です。
8地方区分では近畿地方に含まれる三重県ですが、皆さんの感覚的にはどうでしょうか?
東海地方と呼んだとき、静岡県、愛知県の他、三重県を含むこともあります。これは近畿地方の中心都市、大阪よりも、中部(東海)地方の中心都市、名古屋の方が近く、実際に多くの人が愛知県名古屋に通勤していることから、結びつきがより強いという面で、東海地方に組み込まれているのです。
問題1 本来は中部地方に分類される山梨県・新潟県が首都圏に組み込まれる理由を結びつきという面から考えて答えなさい。
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昔の地方区分
今から約1300~1400年頃前(8世紀)、天皇中心の国家づくりのために設定された地方の行政区分。全国を天皇所在地周辺の畿内と七道に区分です。畿内には5つの国が設置され、五畿七道とも呼ばれます。各道の中にもいくつかの国が存在します。(これら旧国名については次回講義、『昔と今の都道府県 – 県庁所在地・政令指定都市・旧国名』で学習します)
五畿七道とは
五畿七道(ごきしちどう)とは、令制国(りょうせいこく)と呼ばれる行政区分で細かく68ヶ国に区分されていた時代の日本の都道府県の古い呼び名のことです。五畿は畿内5ヶ国、七道は都を中心に地方に伸びる主要な街道7つを指しています。
五畿の読みと由来を知る
まずは、五畿に区分された地域と名前、由来を知りましょう。
【五畿】
畿内(きない)は山城、大和、河内、和泉、摂津の5つの区分に分かれています。それぞれに由来があります。由来を知ることで理解が深まります。
▼畿内
名前 |
旧表記 |
由来 |
現在地 |
山城(やましろ) |
山背(やましろ) |
奈良山の「背後」にあったことに由来する。「山」に囲まれた地形が「城」のようだと変化した。 |
京都府南部 |
大和(やまと) |
倭国(わのくに) |
「倭」と同音の「和」に美称の「大」を冠した。 日本を統治したヤマト政権があった地であり、日本全体を大和と称することもある。 |
奈良県 |
河内(かわち) |
ー |
北境にある淀川と生駒川に挟まれた「川の内(かわのうち)の方」という意味。 |
大阪府南東部・中部 |
和泉(いずみ) |
出水(いずみ) |
神功皇后が訪れた際に清水が湧き出たという逸話から「出水」となり、同音の「和泉」に変化した。 |
大阪府南西部 |
摂津(せっつ) |
津国(つのくに) |
港を意味する「津」を取り締まる職業「摂」から由来する。 |
兵庫県南部・大阪府北西部 |
七道の詳細を知る
七道は都を中心にして地方に向かう街道を表しています。七道の名前と読み、現在の場所を知りましょう。
【七道】
七道(しちどう)は、東海道、東山道、北陸道、南海道、山陽道、山陰道、西海道の7つに区分されています。それぞれ難読漢字が多いので間違えずに覚えましょう。
▼東海道(とうかいどう)
国名 |
読み |
現在地 |
伊賀 |
いが |
三重県中西部 |
伊勢 |
いせ |
三重県北部、中部 |
志摩 |
しま |
三重県志摩半島 |
尾張 |
おわり |
愛知県西部 |
三河 |
みかわ |
愛知県東部 |
遠江 |
とおとうみ |
静岡県西部 |
駿河 |
するが |
静岡県中部 |
伊豆 |
いず |
静岡県伊豆半島 |
甲斐 |
かい |
山梨県 |
相模 |
さがみ |
神奈川県中部、西部 |
武蔵 |
むさし |
埼玉県、東京都、神奈川県東部 |
安房 |
あわ |
千葉県南部 |
上総 |
かずさ |
千葉県中部 |
下総 |
しもうさ |
千葉県北部、茨城県西部 |
常陸 |
ひたち |
茨城県中部、東部 |
▼東山道(とうさんどう)
国名 |
読み |
現在地 |
近江 |
おうみ |
滋賀県 |
美濃 |
みの |
岐阜県南部 |
飛騨 |
ひだ |
岐阜県北部 |
信濃 |
しなの |
長野県 |
上野 |
こうずけ |
群馬県 |
下野 |
しもつけ |
栃木県 |
陸奥 |
むつ |
青森県、岩手県、宮城県、福島県 |
出羽 |
でわ |
秋田県、山形県 |
▼北陸道(ほくりくどう)
国名 |
読み |
現在地 |
若狭 |
わかさ |
福井県南部 |
越前 |
えちぜん |
福井県北部 |
加賀 |
かが |
石川県南部 |
能登 |
のと |
石川県北部 |
越中 |
えっちゅう |
富山県 |
越後 |
えちご |
新潟県(佐渡島を除く) |
佐渡 |
さど |
新潟県佐渡島 |
▼南海道(なんかいどう)
国名 |
読み |
現在地 |
紀伊 |
きい |
和歌山県、三重県南部 |
淡路 |
あわじ |
兵庫県淡路島 |
阿波 |
あわ |
徳島県 |
讃岐 |
さぬき |
香川県 |
伊予 |
いよ |
愛媛県 |
土佐 |
とさ |
高知県 |
▼山陽道(さんようどう)
国名 |
読み |
現在地 |
播磨 |
はりま |
兵庫県南西部 |
備前 |
びぜん |
岡山県南東部 |
備中 |
びっちゅう |
岡山県西部 |
美作 |
みまさか |
岡山県北部 |
備後 |
びんご |
広島県東部 |
安芸 |
あき |
広島県西部 |
周防 |
すおう |
山口県東部 |
長門 |
ながと |
山口県北西部 |
▼山陰道(さんいんどう)
国名 |
読み |
現在地 |
丹後 |
たんご |
京都府北部 |
丹波 |
たんば |
京都府中部、兵庫県中東部 |
但馬 |
たじま |
兵庫県北部 |
因幡 |
いなば |
鳥取県東部 |
伯耆 |
ほうき |
鳥取県西部 |
出雲 |
いずも |
島根県東部 |
石見 |
いわみ |
島根県西部 |
隠岐 |
おき |
島根県隠岐 |
▼西海道(さいかいどう)
国名 |
読み |
現在地 |
筑前 |
ちくぜん |
福岡県北西部 |
筑後 |
ちくご |
福岡県南部 |
肥前 |
ひぜん |
佐賀県、長崎県 |
肥後 |
ひご |
熊本県 |
豊前 |
ぶぜん |
福岡県東部、大分県北部 |
豊後 |
ぶんご |
大分県中南部 |
日向 |
ひゅうが |
宮崎県 |
大隈 |
おおすみ |
鹿児島県東部、 |
薩摩 |
さつま |
鹿児島県西部 |
対馬 |
つしま |
長崎県対馬 |
壱岐 |
いき |
長崎県壱岐 |
いまでも、ときどき耳にする言葉ですが、元を正すと、この五畿七道に由来しているのです。畿内の「畿」とは天皇の住んでいる地域の意味で、現在の近畿地方というのも、天皇がかつて住んでいた京都の周辺という意味合いです。なお、当時まだ北海道という言葉はありません(東北北部と北海道はアイヌの人々が住む土地)。ちなみに、北海道だけ、何故都道府県名と地方名が同じなのか、何故「道」を使うのかと多くの質問を受けますが、これにも理由があります。
かつて、北海道内にはいくつかの県が存在しました。そして、それらをまとめるものとして「道」が存在しました。「道」というと道路というイメージが真っ先に浮かんでしまいますが、「道」自体に地方という意味を含んでいます。そのため、北海道は都道府県名と地方名が同じなのです。
道州制とは?
道州制とは、いくつかの県を統合して行政を広域化するしくみです。
現在の8地方区分はあくまでも形式的なもので、行政的な権限はありません。それを国の持つ権限や財源を地方に移し、地方分権を推進させるというものです。そうすることで、地方が自らの判断と責任の下で行政サービスを効果的・効率的に提供することが出来るようになります。そして、国は外交や国防など国でなければできない仕事に専念し、地域に密着した仕事のほとんどは地方が担うようになります。現在はまだ検討段階ですが、地方部を中心に人口がますます減少し(過疎化)、地方の財源が厳しくなっていく中、道州制の導入も近いのかもしれません。
関連問題プリント 昔の地方区分・旧国名
まとめ
地方区分は各都道府県の学習の入り口です。まずは8地方区分と、それらの位置関係を完璧に覚えましょう。皆さんの住んでいる身近なの都道府県や地方区分について、どのような呼び名になっているのか注目してみましょう。各地方の主要な県や都市の名前を自分で書き出しましょう。わからない場合は地図帳で調べましょう。どうしても名前を覚えられないという人は、知育学習用の玩具やカード、白地図などの教材も活用してください。こちらのページで紹介していますので、チェックしてみてください。
この章の関連問題
下記にてこの章の関連問題もご用意しました。
何度も解いて知識を体に染み込ませましょう。
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第3章の問題まとめ
Yotube動画で第3章『日本の今と昔の地方区分』の問題を解いてみましょう!全50問です。