中学受験 歴史シリーズ。第11回目は『日本の歴史 – 近世(江戸時代2)』です。
前回の講義『日本の歴史 – 近世(江戸時代1)』では、江戸幕府の成立から安定政権を築くまでについて見てきました。
日本史上、最も安定した時代とも言われる江戸時代ですが、前回学習したように「鎖国」と言う特殊な体制が築かれた時代でもありました。世界から断絶したことで、外国に攻められることもありませんでしたが、新たな文化や技術が海外から入って来なくなりました。世界から取り残され、鎖国の影響で日本の文明は世界に100年遅れたとも言われます。しかし、そんな中で現代にも受け継がれるような日本固有の文化が生まれました。また、安定の時代とは言われるものの、江戸時代中期以降は、地球が寒冷化した時代でもあり、凶作が続き、世の中が乱れてきます。つまり、長期政権を築いた江戸幕府も、じわじわと終焉の足音が近づいてくるのです。今回は、安定時代に生まれた産業や文化、そして、相次ぐ凶作により傾き始めた江戸幕府とその改革を学習します。
それでは確認していきましょう。
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前回までの学習内容【おさらい】
本題に入る前に、前回までに学習したことをおさらいしましょう。歴史の学習は連続性が重要です。歴史の分野では毎回、復習問題をまず解いてから始めましょう。
問題1 元々、徳川家康は駿河の【 】氏の人質で、その後、織田信長と同盟を結びました。
問題2 小田原の【 】氏が滅んだあと、徳川家康は豊臣秀吉の命令で江戸を本拠地としました。
問題3 1600年【 】の戦いに勝利した徳川家康は、1603年に【 】に任命され、江戸幕府を開きました。
問題4 江戸時代の政治の仕組みは、将軍と大名が土地と人民を厳しく統治する【 】がとられていました。
問題5 江戸幕府は大名を厳しく統制するために、徳川一門の【 】、関ヶ原の戦い以前から徳川氏に従っていた【】、関ヶ原の戦い以降に従うようになった【 】に分類し、互いに監視させました。
問題6 家康の子どもが大名となった水戸・尾張・紀伊は【 】と呼ばれました。
問題7 1615年に2代将軍徳川秀忠が制定した武士が守らなければならない決まりを【 】と呼ぶ。
問題8 1615年に2代将軍徳川秀忠が制定した朝廷に対する決まりを【 】と呼ぶ。
問題9 1635年に3代将軍徳川家光が制定した大名を1年ごとに領地と江戸を往復させる仕組みを【 】と呼ぶ。
問題10 徳川家康は1600年、豊後の海岸に漂着したオランダ船乗組員の【 】とヤン・ヨーステンを外交顧問として迎え入れました。
問題11 1637年に【 】が起こると、幕府はキリシタンでないことを証明させるために【 】を強化し、【 】で全ての人々を近隣の寺に所属させました。
問題12 1639年には【 】人を追放して、幕府が貿易を行う国は【 】と【 】のみになりました。
問題13 農民は1649年に制定された【 】によって生かさぬよう、殺さぬようと生活を厳しく統制されました。
問題14 徳川綱吉は【 】を重んじて、江戸の湯島に講師を祀る聖堂、【 】を建てました。
問題15 徳川綱吉の亡き後、【 】が正徳の治として、乱れた政治を立て直しました。
▼ 解答をみる
産業の発展と文化
世の中が平和になると、産業がこれまで以上に発展するようになります。各藩が年貢米を売りさばくために、大坂に蔵屋敷を設けます(天下の台所と呼ばれるようになるきっかけ)。商人の中には両替商を営む者も現れ、大名に金を貸して大きな利益を得るようになります。伊勢の商人、三井高利は江戸に越後屋という呉服店を開いて成功し、後の財閥の基礎を築きました(後の三井財閥)。裕福な町人が文化の担い手となり、庶民の娯楽としての文化が発展をとげました。農村でも新たな農具が開発され、新田開発の結果、耕地面積は100年間で2倍に広がりました。庶民の子どもたちは寺子屋で「読み書きそろばん」を習うようになりました。
商業
株仲間と呼ばれる同業者組合が生まれる。営業税を負担することで、営業権を独占。
【商品の流れ】株仲間 → 問屋 → 仲買 → 小売商人 → 市民へ
※問屋:仕入れ及び流通も担う
日本の特殊な流通システムも江戸時代に形作られた。
交通の整備
- 五街道:東海道・中山道・甲州街道・日光街道・奥州街道
- 水運:菱垣廻船・樽廻船(東京~大阪間)
東回り航路(東北~江戸 太平洋経由)
西回り航路(東北~大坂~江戸 日本海経由) ※東回り航路と西回り航路は川村瑞賢によって開かれた。
北前船 蝦夷と大坂を結び、蝦夷からニシン・コンブ・塩・酒などを運んだ。
三都の発達
- 江戸:将軍様のお膝元 大名屋敷が集まる。武士人口が多い。
- 大阪:天下の台所 物資の集積地 各藩の蔵屋敷が集まる。(特産物・米)
- 京都:天子様のお膝元。天皇の住まい。
新田開発
- 新たな農具:備中ぐわ(深く耕す)・千歯こき(脱穀)・とうみ(もみ殻を分離)、千石どおし(米を大きさで選別する)
- 肥料:干鰯・油かす(別名:金肥(金で購入する肥料))
元禄文化
17世紀末~18世紀初め(江戸時代前半)に上方中心(京都・大坂)に栄えた町人文化。
※幕府が江戸に移されても、庶民の活動は、引き続き京都、大坂が中心だった。
- 歌舞伎:日本固有の演劇。手な衣装や一風変わった異形を好んだり、常軌を逸脱した行動に走る者を「かぶき者」と呼び、「かぶき者」の斬新な動きや派手な装いを取り入れた独特な「かぶき踊り」が京都で流行するようになったのが源流。もともとは河原乞食と呼ばれる下賎な見せ物。
- 曽根崎心中・国性爺合戦:人形浄瑠璃の脚本。作者は近松門左衛門。 ※この他、歌舞伎の脚本も手掛けた。
- 世間胸算用・日本永大蔵:浮世草子(社会の風俗描写をメインにした小説)。作者は井原西鶴。
- 見返り美人図:浮世絵。作者は菱川師宣。
- 奥の細道:俳諧・紀行文。作者は松尾芭蕉。
三大改革の時代 ~ききんと改革~
江戸時代の経済は米を基本としながらも、産業の発達により貨幣経済が浸透し、幕府や藩の財政は次第に厳しくなってきます。そこで、財政再建を目的とした3つの改革が行われましたが、体制を立て直すことは出来ませんでした。また、同時に災害や冷害によるききんが発生し、農民は百姓一揆をおこし、町人は打ちこわしを起こすなど、暴動が増加しました。
享保の改革(1716年)
徳川吉宗(8代将軍)による改革。
【内容】質素・倹約 財政の建て直し。
- 上米の制:大名が1万石につき100石を幕府に献上する代わり、参勤交代の江戸滞在を半年とする。
- 足高の制:才能ある武士を重要な役に付けさせて禄高(現在の給料に相当)を増やす。
- 公事方御定書:裁判の公平を図るため。
- 目安箱の設置:庶民の声を聞くため。
- さつまいも栽培:ききんに備えるため。青木昆陽が研究。
- 米価格の安定と新田開発の奨励:吉宗に米将軍とのあだ名も。
- 年貢の引き上げ:四公六民から、五公五民へ(収穫高の5割を年貢として納める)
- 株仲間の公認:幕府の統制下に置くため。
- キリスト教に関係ない洋書の輸入許可:「蘭学」がおこるきっかけとなる。
※蘭学とはオランダ語による西洋の学術や文化を研究した学問のこと。
【ききん】享保の大ききん(1732年)
- 農民:百姓一揆で年貢引き下げ要求。
- 町人:打ちこわし(米の安売り要求)。米屋を町人が襲撃。
田沼意次の政治
9代・10代将軍に仕えた老中。
【内容】商業をさかんにして財政を立て直し。
- 長崎貿易の振興
- 印旛沼・手賀沼の干拓:新田開発のため
- 株仲間の奨励:株仲間が幕府に献金するようになり、賄賂政治が横行。田沼失脚の原因となる。
【ききん】天明の大ききん(1782年)
浅間山噴火による冷害。浅間山の火山灰が江戸にまで降り積もる。
寛政の改革(1787年)
老中、松平定信による(白河藩主、徳川吉宗の孫)。
【内容】統制・倹約を強める。ゆるんだ士風の引き締め。
- 帰農令:出稼ぎ農民を故郷に帰す。農村の復興の為。帰省代を幕府は補助。
- 囲い米の制:ききんに備え、大名に穀物の貯蔵を命じる
- 寛政異学の禁:湯島聖堂(昌平坂学問所)では朱子学以外の学問を禁止する
- 棄捐令:借金帳の消し
- 海防を重要視:海防の手薄を「海国兵談」で指摘した林子平を処罰した。
- 緩んだ風俗の取り締まり
※朱子学とは儒学の一種(儒学原理主義的な学問)で、身分秩序を特に重んじる。
天保の改革(1841年)
老中、水野忠邦による。
【ききん】天保の大ききん。寒冷な気候が続き、大量の餓死者が出る。貧民救済のため元大坂町奉行の大塩平八郎が蜂起(大塩平八郎の乱 1837年)。
【内容】断固たる倹約、ぜいたく品や風俗も取り締まり。非常に厳しい改革。
- 人返しの法:出稼ぎ農民を強制帰村。
- 株仲間の解散:物価を下げるため
- 倹約令:ぜいたくの禁止。
- 風俗の取り締まり:風紀を乱す出版などの禁止。
- 上知令:江戸・大阪周辺の土地を直轄地に。大名・旗本の猛反対で実現できず、水野失脚の要因となる。
新しい学問と文化
江戸幕府に対する不満は、新たな学問を生み出しました。それは、江戸幕府が重視していた儒学(中国由来)に対抗、批判するものであり、日本の古典を研究し、儒教や仏教の影響を受ける以前の古代の日本にあった、独自の文化、思想などを明らかにしようとする学問、「国学」です。この考え方は、後に江戸幕府を滅ぼすことになる尊王思想(天皇中心の世の中への復帰)へと繋がっていきます。また、一方で、享保の改革で流入するようになった洋書、つまりオランダ語を通して西洋の学問を学ぶ「蘭学」も生まれました。蘭学からは、鎖国を批判し、開国を主張する風潮が生まれます。新しい学問は、倒幕の原動力になっていったのです。
国学
古い日本人の心を明らかにしようとする学問。
- 本居宣長:「古事記伝」 古事記・万葉集・源氏物語を研究。同じく日本の歴史書である日本書紀は漢文(中国語)で書かれている為、日本の精神が損なわれているとして批判の対象になった。
蘭学
オランダ語の書籍から、西洋の学問を学ぶ。
- 新井白石:「西洋紀聞」
- 杉田玄白・前野良沢:「解体新書」人体の解剖書、「ターナル・アナトミア」の翻訳。
- 伊能忠敬:測量法を学び、日本地図を完成させる。
- シーボルト:オランダ商館のドイツ人医師。長崎に鳴滝塾を開く。門下生の一人に高野長英。
- 緒方洪庵:医者、蘭学者。大坂に適塾を開く。門下生の一人に福沢諭吉。
※シーボルトは帰国時に伊能忠敬の日本地図を持ち帰ろうとして処罰される。
化政文化
江戸で栄えた庶民文化。庶民の活動は、江戸時代後半になると、次第に江戸が中心になってくる。江戸前寿司(握りずし)が誕生するのもこの頃。それまでの寿司は上方寿司(押し寿司)が中心。
浮世絵が錦絵へに変化(多色刷りになる)
歌川広重「東海道五十三次」・葛飾北斎「富嶽三十六景」など
世の中を風刺する川柳や狂歌、滑稽本の流行
十返舎一九「東海道中膝栗毛」・滝沢馬琴「南総里見八犬伝」
俳諧
小林一茶、与謝蕪村などが活躍。
歴史の学習
中学受験の多くを占める歴史は、年表や人物名など暗記部分が大量になります。年代ごとにまとめたり、人物にフォーカスして時代背景を学んだり、文化財や地理的要素から歴史を探るという方法もあります。膨大な知識が必要となる歴史ですが、興味のある角度から切り取っていくと案外スッと覚えることができます。
No. | テーマ | 内容 |
1 | 旧石器時代・縄文時代 |
旧石器時代、縄文時代の暮らしや文化を解説。 |
2 | 弥生時代 |
古代、弥生時代の暮らしや文化を解説。 |
3 | 古墳時代・飛鳥時代1 |
古代、古墳時代、飛鳥時代、氏姓制度、古墳時代の終焉から 聖徳太子の時代、飛鳥時代の始まりを解説。 |
4 | 飛鳥時代2・奈良時代1 |
古代、飛鳥時代、奈良時代、大化の改新、平城京、 聖武天皇と仏法などを解説。 |
5 | 奈良時代2・平安時代1・平安時代2 |
古代、奈良時代、平安時代、藤原氏の摂関政治、 浄土真宗、武士の台頭、源氏の進出を解説。 |
6 | 平安時代3・鎌倉時代 |
中世、平安時代、鎌倉時代、平氏、封建制度、 執権政治、承久の乱暮を解説。 |
7 | 室町時代 |
中世、室町時代、南北朝の動乱、 東アジアの情勢、経済、産業を解説。 |
8 | 戦国時代 |
中世、戦国時代、都市の発展、ヨーロッパの 状況や文化を解説。 |
9 | 安土桃山時代 |
中世、安土桃山時代、織田信長、豊臣秀吉、 徳川家康の天下統一を解説。 |
10 | 江戸時代1 |
近世、江戸幕府の成立、外交、鎖国、 徳川綱吉の時代を解説。 |
11 | 江戸時代2 |
近世、江戸時代、産業の発展と文化、 三大改革を解説。 |
12 | 江戸時代3 |
近世、江戸時代、ヨーロッパ諸国の市民革命、 産業革命を解説。 |
13 | 江戸時代4 |
近世、江戸時代、ペリー来航、大政奉還、 江戸幕府滅亡を解説。 |
14 | 明治時代1 |
近世、明治時代、明治維新、富国強兵、 文明開花を解説。 |
15 | 明治時代2 |
近世、明治時代、西南戦争、大日本帝国憲法の制定、 立憲国家を解説。 |
16 | 明治時代3 |
近世、明治時代、日清・日露戦争、産業革命、 日本の領土を解説。 |
17 | 大正時代 |
近代、大正時代、第一次世界大戦、 大正デモクラシーを解説。 |
18 | 昭和時代1 |
近代、昭和時代、、関東大震災、満州事変、 日中戦争、世界恐慌を解説。 |
19 | 昭和時代2 |
近代、昭和時代、領土、民主化政策、 第二次世界大戦を解説。 |
20 | 昭和時代3 |
近代、昭和時代、高度経済成長、第一次石油危機、 戦後の国際関係を解説。 |
21 | 平成1 |
現代、平成、バブル崩壊、冷戦、 文化、経済を解説。 |
22 | 平成2・令和 | 現代、平成、令和の経済、政権交代、東日本大震災など 日本を取り巻く環境を解説。 |
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