レールが無いからこそ、面白いバスの路線図
路線図と聞いて、すぐに思い浮かぶには鉄道の路線図でしょう。鉄道には実際にレールがあり、それが路線図としてデザイン化されているわけで、最もなじみ深くなるのが頷けます。それだけでなく、レールがあるからこその、一種の安心感があり、路線図を見ながら見知らぬ土地へ出かけることも、そう抵抗なく行くことが出来るというものです。だから、より路線図を眺めるという経験が増えるのかもしれません。
それが、バスとなると、仮に路線図があったとしても、ちょっと心配ということがあります。実際に田舎の鉄道を廃止して、バスに転換したところ、さらに客が減ったというのは、明らかに観光などで遠方から来る人がバスを使わないということを示しています。バス路線図は地域に根差したものであり、逆に普段利用しているので路線図など要らないという面もあります。よってバス路線図というのは、なんだか遠い存在になりがちです。しかし、バスマニアに言わせれば、鉄道マニアの路線図自慢など、何の意味も無いと言われてしまいます。国内に無限に存在するバスをマスターしたバスマニアこその真の路線図マニアだそうです。
そんなわけで、路線図マニアとしては、まだ初心者に過ぎない筆者が、バス路線図との親しみ方を簡単に紹介します。
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鉄道空白地帯を結ぶ「たてバス」
バスは主に鉄道の駅から少し離れた住宅地を、あるいは鉄道駅と鉄道駅をショートカットする形で結ぶというのが主なルートです。しかし、住宅地行きの路線ではそのエリアの住民でない限りなかなか乗る機会はありません。一方で、駅と駅を結ぶ路線の場合、鉄道を利用するよりも早く移動できる場合があります。東京を中心として、都市部には鉄道網が発達していますが、意外と鉄道空白地帯は存在します。特に東京首都圏の鉄道は山手線を中心として放射状に延びている為、案外南北(たて)の移動が不便です。
例えば、JR中央線と西武線沿線を行き来する場合、またJR京葉線とJR総武線沿線を行き来する場合です。
このような区間には、バスと言えど非常に多い本数が設定されており、地域の足として機能しており、「たてバス」という愛称で親しまれています。
駅と駅をショートカット、電車とバス乗り継ぎ早わかり図
この「たてバス」という愛称を最初に付けたのは西武バスです。
もともと西武バスの営業エリアは鉄道が東西に複数伸びる地域であり、まさに鉄道駅と鉄道駅をたてに結ぶ路線を多く開設しており、通常の複雑なバス路線図の他に、車内に「電車とバス乗り継ぎ早わかり図」というものを貼りだしていました。沿線外からの利用者にも非常にわかりやすいシステムで、今でもこの路線図は使用されています。この路線図の面白いのは、単に路線を色分けして示しただけでなく、運行本数によって線の太さを変え、便利度を示している点です。鉄道路線図には見られない、面白い取り組みと言えます。
地方都市のバス網、に注目
地下鉄網の拡大で、大都市においてもバスの役割は減ってきています。東京に住んでいても都バスに乗ったことがないという人は多いのではないでしょうか?一方、地方都市ではバスがまだまだ頑張っているところも多いです。例えば静岡や浜松、京都、岡山、広島それに福岡などでは人口の割に地下鉄などの鉄道網が少ないことから、大通りをバスがひっきりなしにやってきますから、バスマニアにはたまらない都市とも言えます。
特に九州は九州全体でバス網が発達しており、その中心地、福岡はバス王国として名を馳せています。天神バスターミナルは日本最大のバスターミナルとしても有名で、これを運営する西鉄バスは、保有台数およそ2800台、年間輸送人員は約2億6000万人、年間総走行距離は約1億5000万kmと、日本最大のバス会社でもあります。地元ではバスが多すぎてバス同士で渋滞する、「バス渋滞」も有名です。
観光都市、京都のバス路線図がカオス
そんな中で私がおススメするのは京都市交通局のバス、通称、市バスの路線図です。
誰もしもが一度は訪れたことがあるであろう京都、実はバスだらけの街なのです。京都市内中心部に路線網が限定されている為、規模はそれほど大きくないものの、保有台数は800台を超え、日本有数のバス密度です。特に住民の足のみならず、日本に留まらず世界からの観光客が利用する為、系統毎の輸送量では日本一。日本一の乗客数を誇るのは205系統でなんと、1日あたり3万人を超え、運行本数も300本に上ります。元々、京都市内には路面電車網が網の目のように張り巡らされていましたが、全て廃止されバスに置き換えられました。
そのため、碁盤の目状の京都の町を縦横無尽にバスが走ることになったのです。地下鉄が現在では2路線開業していますが、市民の足、観光客の足は圧倒的にバスが主流です。観光客の急激な増加で、一般の人がバスに乗り切れない、道路渋滞が悪化するなどの、観光公害を惹き置きしているのも事実ではありますが、京都観光の際には、是非、こちらのバス路線図と睨めっこしてみて下さい。
さすがは、観光都市京都、このような親切丁寧、カラフルな路線図が用意されているのですが、逆に詳し過ぎて目が回るほどです。もともと碁盤の目状に道路が張り巡らされている為、各路線が直角に交わっているのも面白いところですが、観光地などのシンボルが描かれていないと、今どこにいるのか、本当にわからなくなってしまいそうです。
京都市バスの路線図、ここが凄い!!
世界的観光地となりつつある京都、ここまで充実した路線図を事業者が配布していることはなかなかありません。しかし、この一見目の回ってしまいそうな路線図にも工夫がなされています。系統毎に色分けされていますが、この色分けは経由する市内を南北に貫く主要道路によって分けられており、この法則をしていると、このバスがおよそどこを通るかと言うのが一発でわかるようになっています。西大路が黄色、千本・大宮通りが紫、堀川通が緑、河原町通が水色、東山通りが朱色、白川通りが白になっていますので、京都の通りを色のイメージと結び付けて名前を覚えるのにも最適です。
この色はバス前面の行き先方向幕ともリンクしており、全国で行き先表示器のLED化が進んでいますが、LEDではこのような細かい色分けが出来ない為、京都市交通局では、全国でも珍しくなってきている幕式の表示器に拘っています。また系統番号も循環系統がオレンジ、その他の均一料金が青色、郊外へ出る整理券方式の系統が白色というようにも分けられており、市バスの複雑な系統を色の組み合わせで、わかりやすく表示しています。
まとめ
今回紹介したのは都市部を中心とした本数や系統の多い路線です。日本にはこの他にも数えきれないほどのバス路線が存在します。しかし、地方ローカル鉄道と同様に路線バス業界も、少子高齢化、またマイカー利用者の増加で苦境に立たされています。この数十年で8割減少したとも言われており、鉄道よりも状況が厳しいことが伺えます。当然のことながら、各地域で路線の縮小が相次いでいます。テレビ番組で「ローカルバス乗り継ぎの旅」などが好評を博す一方で、そもそもバスを乗り継いで進むことの出来ないエリアと言うのがどんどん拡大しています。
しかし、鉄道と異なり、廃止のニュースが大々的に報じられることが少ないだけでなく、やはり地図から線路が消えた=路線図が消えたというイメージに結びつかないとも大きいのではないでしょうか。道路を走るバスという仕組みの宿命でしょうか。バス路線図は各バス会社のホームページの他、その地域を走るバス路線を統合した路線図が本屋さんで売っていた李、ネット上で公開されていたりしますので、是非ご覧になってみてはいかがでしょうか。