中学受験 地理シリーズ。第23回目は『グローバル化が進む世界 (日本の輸出入)』です。
前回の講義『代表的な工業地域(瀬戸内・東海・京葉・鹿島臨海)の特徴』では、5つの工業地域と工業出荷額の内訳を見てきました。今回は日本地理のひとまずのまとめとして、日本のモノやヒトの動きを学習します。これまで日本の農業や工業を学んで、いずれも日本国内だけでは成り立たないということがわかりました。私たちは国境を越えたモノの動きの中で暮らしています。特に私たちに欠かせない食べ物は半分以上が海外からの輸入品です。また日本の中心となっている自動車を中心とした機械産業も、大部分の素材を輸入に頼っています。
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グローバル化とは
グローバル化とは、情報通信技術の進展、交通手段の発達、市場の国際的な開放等によりヒトやモノの国際的な移動が活発化し、様々な分野で「国境」の意義があいまいになること、および、各国が相互に依存し、他国や国際社会の動向を無視できなくなっている現象です。日本地理の学習では特に、後者の「各国が相互に依存し、他国や国際社会の動向を無視できなくなっている現象」をより詳しく見てゆきます。
食べ物はどこからやってくる?
いきなりですが、復習です。日本の食料自給率を覚えていますか?我々日本人はどれくらいの割合の食料を海外に頼っていたでしょうか?
2018年の日本の食料自給率はわずか37%です(カロリーベース)
では、輸入されてくる食料はどこから来るのか、もう一度見ていきましょう。
主な食料の輸入先
国名の順序は輸入量が多い順です。中学受験では、輸入先の問題が頻出されます。食料の問題は、特に身近に感じることができます。主な食料は上位だけでもあたまに入れておきましょう。普段の生活でも食料を購入するときに気にしておくことも大切です。
穀物
四大穀物といわれる、米、大豆、とうもろこし、小麦については、しっかりと押さえておきましょう。米以外の穀物は海外からも輸入に頼っています。
- 大豆 1位 アメリカ
- とうもろこし 1位 アメリカ
- 小麦 1位 アメリカ 2位 カナダ
肉類
肉類も多くを海外からの輸入に頼っています。主な肉類については輸入先を覚えておきましょう。肉により、輸入先に特徴があるので覚えやすいですね。
- 牛肉 1位 オーストラリア 2位 アメリカ
- 豚肉 1位 アメリカ 2位 カナダ
- にわとりの肉 1位 ブラジル 2位 タイ
魚介類
周りを海に囲まれた日本が、魚介類まで輸入しているのは意外かもしれません。表やグラフの穴埋め問題に対応できるように、品目別に輸入先を押さえておきましょう。
- さけ・ます 1位 チリ 2位 ノルウェー
- まぐろ・かつお 1位 中国 2位 台湾
- えび 1位 ベトナム 2位 インド 3位 インドネシア
- いか 1位 中国 2位 ベトナム 3位 タイ
食料の輸入についてよく出題される問題を少し解いてみましょう。
問題1 皆さんの大好きな果物のうち、最も輸入量が多い果物は何でしょう?
▼ 解答をみる
エネルギー資源はどこからやってくるか?
私たちの生活に欠かせない電気、それに自動車を走らすガソリンはどこからやってくるのでしょうか。ちなみに、電気も発電時、多くの場合に石油や石炭、天然ガスを使用しますし、ガソリンも元は石油から生成されています。石油や石炭、天然ガスのことをエネルギー資源と呼びますが、日本はエネルギー資源に乏しい国です。ほぼ全てを輸入に頼っています。
2017年のエネルギー自給率はわずか9.6%です
日本のエネルギー自給率についてよく出題される問題を少し解いてみましょう。
問題1 2010年まで日本のエネルギー自給率は20%ほどありました。しかし、あることをきっかけに2011年以降、エネルギー自給率が急激に下がり、10%を下回るようになってしまいました。そのあることとは何ですか?
ヒント 2011年に起きた大きな災害です。
▼ 解答をみる
では、逆に9.6%のエネルギーはどのようにして生まれてきているのでしょうか?
これは水力発電・地熱発電・風力発電といったクリーンエネルギー、再生可能エネルギーと呼ばれるものです。あまり知られていませんが、原子力発電は石油、石炭などの輸入資源を必要とせず、さらに二酸化炭素も排出しないことから、日本は1970年代の石油危機以降、原子力発電所を増やしていました。
原子力発電所は地方の沿岸部に多く存在します。特に東北地方太平洋側、石川県から福井県にかけてに集まっており、原発銀座と呼ばれています。水力発電所は主にダムと共にあるため、山間部に、火力発電所は石油、石炭の輸入に便利な、港のある大都市の沿岸部に多く存在します。
エネルギー資源の輸入先
国名の順序は輸入量が多い順です。日本はほとんどのエネルギー資源を輸入に頼っています。主な品目については、しっかりと輸入先を押さえておきましょう。近年の世界事情により注目度の高い話題ですので、狙われやすいポイントです。
- 原油(石油):サウジアラビア アラブ首長国連邦 カタール
- 液化天然ガス:オーストラリア マレーシア カタール
- 石炭:オーストラリア インドネシア ロシア
知らない国名は地図帳で調べましょう。エネルギー資源は、地球上のどの地域から多く輸入されているのか考えましょう。
製品原材料はどこからやってくるか?
エネルギー資源だけではなく、鉄鉱石や木材などの製品を作るための原材料も多くを外国からの輸入に頼っています。また、石油はエネルギー資源ですが、プラスチックの原材料にもなります。日本はこのように外国から原材料を輸入し、これを加工して工業製品を輸出する加工貿易を行ってきました。よって、長らく石油、木材、鉄鉱石が輸入品目の上位を占めていました。しかし、近年はそれも若干変わりつつあります。中国や韓国製の安い家電などの電気機器が増えてきたことで、機械製品の占める割合が増えているという実情もあります。
製品原材料の輸入先
国名の順序は輸入量が多い順です。製品原材料とは、どんな品目があるのかを覚えましょう。原材料から何ができるのかにも注目しながら、輸入先の上位国を押さえておきましょう。
- 鉄鉱石:オーストラリア ブラジル
- 銅鉱:チリ 中国 ペルー
- ボーキサイト(アルミニウムの原料):オーストラリア 中国
- 木材:ヨーロッパ各国(ロシア除く) アメリカ カナダ オーストラリア
日本の貿易
このように多くの食品、資源、原材料を外国からの輸入に頼っていますが、日本の貿易収支は2010年まで長らく黒字を保ってきました(2011年以降、原子力発電所の停止で石油の輸入が増えたから)。それは輸入した以上の額の製品を輸出しているからです。
特にエネルギー資源や製品原材料のほとんどがアジアやオセアニアを中心とした発展途上国からの輸入に頼っている一方、製品の輸出先の多くは中国・アメリカ・韓国などの先進国やそれに準ずる国が占めています。なお、近年は輸出額、輸入額ともに日本の貿易相手国は中国が第1位、次いでアメリカという順序です。
日本がある国との間で輸入額が輸出額より多い場合、貿易赤字、輸出額が輸入額より多い場合、貿易黒字となります。日本は資源や原材料を多く輸入している対途上国では日本は貿易赤字、製品を輸出している先進国に対して貿易黒字になる傾向があります。
日本の製品輸出と貿易摩擦
日本は歴史的に明治時代以降、加工貿易を続けてきました。しかし、産業の発達と共に輸出品の中心は繊維製品から鉄鋼、テレビ、自動車へと変化してきました。そして、日本の貿易相手国第二2位のアメリカとの間では、主に日本の自動車の輸出が増えすぎて貿易摩擦が発生するようになりました(貿易相手国第1位の中国とは日本の貿易赤字のため、大きな問題は発生していない)。
そこで、自動車メーカーがアメリカでの現地生産を始めたり、また安い労働力を求めて東南アジアに進出する企業も増え、海外で生産された製品を日本へ輸入する「逆輸入」も増えています。2018年現在、輸出・輸入共に品目別で機械の占める割合が1位になっています。
世界の貿易
世界の国々も日本と同じく、自分の国の得意な分野のモノを輸出し、自分の国にないものを輸入して国民の生活を支えています。また、自分の国の製品を安い外国製の製品から守るために、輸入される製品に対し、高い関税をかけていることが一般的です。
そんな中、急成長を続ける中国は、2009年には輸出量が世界一となり「世界の工場」とまで呼ばれています。一方で、アメリカは世界一の輸入国で、貿易赤字も世界最大です。その赤字のうちの半分は中国に起因しており、中国・アメリカの貿易摩擦は非常に激しくなっています。アメリカは中国が国際ルールを守っていないとして、2018年から、中国からの輸入品に追加の関税をかけ、中国もアメリカからの輸入品に関税をかけて対向するなど、米中貿易戦争が勃発しています。
しかし、関税で自国の産業を守る一方で、関税を廃止することで、国と国との間で自由な貿易を活発化させる動きもあります。FTA(自由貿易協定)とEPA(経済連携協定)と呼ばれるもので、日本も17の国、地域とこれらを結んでいます。2019年にはEU(ヨーロッパ連合)とのEPAがスタートしています。
日本の貿易港
輸出入されるモノはどこから入り、どこから出ていくのでしょうか。一般的な考えからすると、港で船から降ろされ、また積み込まれていくイメージが強いかもしれませんが、空港の存在も忘れてはいけません。空港も立派な港の一つです。
実は輸入額日本最大の港は成田国際空港です。
名古屋港が自動車を多く輸出し、日本一の輸出港になるといるというのはわかりますが、では成田空港ではどんなものが輸入され、輸出されているのでしょうか。
飛行機で輸送できる製品の特徴
また、東京港・大阪港は大量消費地に近い為、衣類や肉類、魚介類の輸入が多くなっています。取り扱い額ランキングは上位5位までを覚えるようにしましょう。
関連問題プリント 日本の主な貿易港
新しい貿易
近年、これまでの貿易にとらわれない、新しい貿易も生まれてきています。いずれも、中国などの国々がますます力を付けていく中、今後日本を支えていく産業として期待されています。これまでの製品輸出にとらわれない「新しいモノの輸出」です。
技術の輸出
例)新幹線など日本のすぐれた技術の海外への売り込み。インドとアメリカで建設計画がスタートしています。
文化の輸出
例)アーティストの海外公演やアニメ・マンガ(いわゆるクールジャパンと呼ばれるもの)などの輸出。動画配信サービスの拡大で、世界で日本のドラマやアニメが視聴されています。
訪日(インバウンド)観光客の拡大
2003年に小泉純一郎首相が「Visit Japan」キャンペーンを開始。年間3000万人の受け入れを目標としましたが、2018年に目標を達成し、さらなる増加が期待されていました。しかし、2020年の新型コロナウイルス問題で、外国人観光客は事実上ゼロの状態となり、観光業界は大きな打撃を受けています。なお、2018年の外国人観光客による国内消費は4.8兆円でした。
まとめ
様々な国の名前が出てきて、混乱するかもしれませんが、まずはモノの流れを抑えましょう。基本的な流れのひとつ目は食料(特に穀物、牛肉・豚肉)はアメリカから輸入し、自動車などの機械製品をアメリカに輸出しています。機械製品の方が食料より価格が高い為、日本とアメリカで見た場合は日本の貿易黒字となります。そして、次にエネルギー資源や原材料の輸入です。石油は中東のアラブ諸国から、石炭、液化天然ガス、鉄鉱石、ボーキサイトはオーストラリアから輸入しています。
なお、オーストラリアはそれだけでなく、牛肉やオレンジも輸入していますので、日本とオーストラリアは非常に密接に結びついています。また、これらのエネルギー資源、原材料の輸入国に対しては、大幅な日本の貿易赤字となっています。日本は資源に乏しい国ですが、輸入に頼らざるを得ませんが、中東のアラブ諸国で紛争や戦争が発生した場合、かつて経験した石油危機のような混乱に巻き込まれる恐れがあります。食料のみならず、エネルギーやその他の面でも、再生可能エネルギーの開発をしたり、新たな製品、サービスを生み出すことに力を入れていなかければなりません。
この章の関連問題
下記にてこの章の関連問題もご用意しました。
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第23章の問題まとめ
Yotube動画で第23章『グローバル化が進む世界』の問題を解いてみましょう!全50問です。