中学受験 地理シリーズ。第9回目は『日本各地の気候』です。
前回の講義『気候の原因とそれを決めるもの』では、日本の大部分は温帯の気候区分に属し、北海道と沖縄のみ冷帯、亜熱帯に属することを学びました。今回はその中でも各地で異なる気候を詳しく説明し、また、その気候に応じた農業や人々の暮らしとリンクさせることで、より定着度を高めます。
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南西諸島の気候(沖縄県)※亜熱帯
年間を通して降水量が多く、気温が高いです。月平均気温は15℃を下回りません。
- 梅雨と台風。特に台風の通り道となるため、台風銀座と呼ばれている!
台風に備えたくらしと農業
昔ながらの家は1階建てがメイン、屋根が低い(尖っていない)作りになっています。屋根瓦はしっくい(石灰に砂やわらをまぜたもの)で固めており、家の周囲を石垣や防風林で囲っています。最近の家はコンクリートでつくられていることも多いです。降水量は多いがダムもなく、降った雨はすぐに海へ流れ出てしまうため、屋根のうえに給水タンクがあります。温暖な気候を利用して、さとうきびやパイナップルの生産がさかんです。
瀬戸内の気候(瀬戸内海沿岸)
年間を通して降水量が少ないです。瀬戸内地域の気候的特徴は、北は中国山地、南は始皇帝、紀伊山地に囲まれているので、温暖で雨が少なく、晴れが多く、日照時間も長く暖かいことです。年間平均気温は約16度、年間の平均降水量は約1000~1600mmです。瀬戸内式気候,瀬戸内海気候と呼ばれます。
- 中国山地と讃岐山脈・四国山地が季節風をさえぎる!
水不足に備えたくらしと農業
特に香川県は県内を流れる大きな川が少なく、古くから水不足に悩まされてきました。水不足になることを干害と呼びます。干害を防ぐためにかつては、ため池を作り、現在でも一部が残っており、香川県の印象的風景です。特に弘法大師が作ったといわれる満濃池が有名です。
香川県がうどん県と呼ばれるほど、讃岐うどんが有名なのは、かつては大量の水を必要とする稲作が出来なかったからです。なお、現在ではほとんど小麦の生産はしていません(うどん用の小麦粉はほぼ輸入品)。
水不足を解消するため、1974年に香川用水が完成しました。徳島県を流れる吉野川の水を讃岐山脈にトンネルを掘って、香川県に引き込みます。降水量の少なさ、日照時間の多さを利用して、愛媛県ではだんだん畑を利用したみかんの生産がさかんです。また、瀬戸内海沿岸では古くは塩田が多く広がっていました。(現在はほとんど残っていません)
日本海側の気候
冬の降水量が多いです。日本列島の本州の日本海側の気候の特徴は、冬に雪が多く、夏は太平洋側より雨が少なく、春にフェーン現象がみられることです。暖流の対馬海流の上にシベリアからの寒冷が吹きつけ、中央脊梁山脈にぶつかって、大雪をもたらします。
- 冬の北西の季節風と暖流の対馬海流の影響。特に新潟県を中心とした北陸地帯は冬の豪雪地帯となる!
雪に備えたくらしと農業
ひさしを伸ばした雁木(商店街のアーケードのようなもの)で、通路に雪を積もらないようにします。車の車線には消雪パイプを設置。地下水をくみ上げて、道路上に水を流しています。その他、排雪溝などの設備も。雪が屋根上に多く積もらないよう、屋根の角度が急で、二階にも出入り口があります。古くは急な屋根の屋根裏を利用し、蚕の飼育も行っていました(繭を取るため)。農作業は夏しか出来ないため、夏の米作りに力を入れています。このような地域を水田単作地帯と呼びます。結果、新潟県のコシヒカリは日本を代表する米となりました。
太平洋側の気候
夏の降水量が多いです。特に南端に突き出た高知県や和歌山県南部の夏の降水量は非常に多くなっています。ただし、逆に冬は降水量が少なく、乾燥する地域もあります(関東地方内陸部など)。夏に気温が上がらない、冷害が発生する地域もあります(東北地方太平洋側)。
- 夏の南東の季節風と梅雨・台風の影響!
雨の多い地域のくらしと農業(高知県)
高知県では夏の南東の季節風が四国山地にあたり、多くの雨を降らせます。一方で、暖流の日本海流(黒潮)が近くを通る影響もあり、年間を通して比較的暖かいです。かつてはこの気候をいかした米の二期作(年に2回米づくりをする)を行っていました。しかし、近年の米余りから、米の二期作は減少し、野菜の生産がさかんになっています。暖かい気候、またビニールハウスを利用して、なす、きゅうり、ピーマンなど夏野菜の促成栽培が有名です。
※促成栽培:夏の野菜を春先に出荷すること(高値で売れる)。
乾燥した地域のくらしと産業(群馬県・栃木県)
冬の北西からの湿った季節風は越後山脈をこえるとき、冷やされ、日本海側に多くの雪を降らせますが、山をこえた後、太平洋側には冷たい乾いた風が吹きます。この乾いた風を「からっ風」と呼びます。別名「赤城おろし」。家を土埃から守るため、古い地区には屋敷森が残っています。逆に夏の午後には入道雲が立ち込め、夕立(スコール)が発生します。農業は畑作中心。群馬県ではこんにゃく芋やネギの生産、栃木県ではかんぴょうの生産がさかんです。
東北地方太平洋側のくらしと農業
寒流の千島海流と春から夏に東から吹く、やませの影響で霧が発生し、夏の気温が低下し、日照時間が短くなります(冷害)。農作物の育成に影響し、古くはほとんど米が収穫できない凶作を引き起こしていました。そのため、現在では酪農、牧畜、畑作がメインになっています。稲作を行っている仙台平野では、稲を品種改良して、冷害(いもち病)に強くしています。(ササニシキ→ひとめぼれ)
中央高地の気候(山梨県・長野県など)
年間を通して降水量が少なく、夏と冬の気温差が大きいです。周囲を標高の高い山地に囲まれている盆地独特の気候で、季節風の影響を受けず、年間の湿度が低く、年間降水量が少なくなります。冬は放射冷却現象によって、朝晩の気温がかなり低くなることが多い。雪は豪雪地帯を除くと太平洋側と同様になりやすい。
- 中周囲を山に囲まれている(特によく出題される甲府・松本・長野はいずれも盆地の中にある都市)。長野県野辺山原(八ヶ岳)、群馬県嬬恋村などは標高が高く、夏でも涼しい!
中央高地のくらしと農業
盆地では少ない降水量と寒暖差を利用して、りんご、ぶどう、ももなどの生産がさかんです。(寒暖差が大きいほうが果物は甘くなる)。野辺山原や嬬恋村ではキャベツ、レタス、はくさいなど冬野菜(高原野菜)の抑制栽培がさかんです。
※抑制栽培:夏の涼しい気候を利用し、冬や春の野菜を夏に出荷すること(高値で売れる)。
北海道の気候 ※冷帯
降水量が少なめです。1月と12月の月平均気温が0℃以下。内陸部(帯広など)は夏と冬の寒暖差が大きく、太平洋側東部(根室など)はやませの影響で濃霧が発生し、日照時間が短いです。
- 梅雨と台風の影響を受けない!
北海道のくらしと農業
北海道と一括りにしても広大なため、各地で異なる農業を行っています。いずれにせよ、本州以南とは全く異なる気候、またやせた土地などの影響で、非常に厳しい環境の中、様々な工夫で乗り越えてきました。
石狩平野
もともとは農業に適さない泥炭地であったが、客土と呼ばれる土地改良を行った。また品種改良で北海道でも生育する稲も用いて稲作を行っている。
十勝平野
水はけのよく、やせた土地であるため、輪作(耕地を分けて、毎年違う作物を順番に育て、土地の養分が減りすぎないようにする)を行いながら畑作を行っている。北海道の気候を利用して、トウモロコシ、じゃがいも、小麦、てんさいなど、本州ではほとんど栽培されていないものを生産している。
根釧台地
濃霧の発生するエリアで、農業に適さない土地。1950年代のパイロットファーム(実験農場)計画で、近代的な機械を使い、大規模酪農経営を展開するという、 いわゆる酪農先進地帯として開発される。レンガ造りのサイロ(牧草を貯蔵しておく建物)は北海道を象徴する牧歌的風景。
各地の気候、雨温図の読み取り方
ざっと各地の気候を見てきましたが、最後に雨温図の読み取りです。雨温図なしに、日本の気候分野を終わらすことは出来ません。雨温図とは、ある都市の月平均気温と降水量を折れ線グラフと棒グラフで示した図です。試験問題には必ずと言っていいほど、この雨温図の読み取り問題が出題されます。選択式の問題で、雨温図からどこの都市のものか判断しなければなりません。
ただ、安心してください。基本的に上で紹介した6つの日本国内の特徴的な気候の地域から、1つずつ(太平洋側からは2都市出る場合あり)雨温図が出題されます。
雨温図で出題されやすい都市
- 南西諸島の気候:那覇市
- 太平洋側の気候①:高知市・尾鷲市
- 太平洋側の気候②:大阪市・和歌山市・東京
- 瀬戸内の気候:高松市・岡山市
- 中央高地の気候:松本市・長野市
- 日本海側の気候:新潟市・金沢市・鳥取市
- 北海道の気候:札幌市・帯広市
では、それぞれの都市の雨温図の見分け方のテクニックを紹介します。上記、6つの特徴的な雨温図が一気に出てきても慌てる必要はありません。見た目ですぐに判別できてしまうものがほとんどだからです。
- わかるものから消去法で消していくのが雨温図問題攻略の近道!
ひと目でわかる雨温図
北海道
1月と12月の月平均気温が0度を下回る(北海道以外では12月の月平均気温が0度を下回りません)
南西諸島
年間を通して月平均気温が15度を下回らない
日本海側
冬の降水量が多い。(棒グラフが緩い谷型になる)
ここまでは反射的に選択しましょう。
ここから先は少し考えなければなりません。いずれも似た者同士だからです。まず、似ているのは瀬戸内と中央高地です。どちらも年間の降水量が少なめで、グラフの形も似ています。
- 注目してもらいたいのが平均気温!
気温グラフも非常に似ていますが、中央高地の方が平均気温が低いですので、低いほうを中央高地と判断しましょう。
最後に残るのが太平洋側の二地点です。気温も降水量も山型となります。しかし、台風の影響を特に受けるのは高知県や三重県ですので、より降水量が多い方が、高知市・尾鷲市となります。ちなみに尾鷲市は降水量が日本で最も多い都市です。
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まとめ
ひとえに温帯とくくっても、このように日本各地には様々な気候が存在します。そして、その気候の違いから、地域の文化や伝統、名産品が生まれ、今でもその地域の産業としれ根付いています。ここで勉強した内容は、今後、地域ごと学習に入ったときに再び出てくる重要なワードもあります。それまでに、忘れないようにしっかりと復習し、定着させてください。
この章の関連問題
下記にてこの章の関連問題もご用意しました。
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第9章の問題まとめ
Yotube動画で第9章『日本各地の気候』の問題を解いてみましょう!全50問です。